
丸亀製麺、「できたて」が最高益を支える構造
トリドールHDの2026年3月期は売上収益2787億円で過去最高、営業利益は21.9%増。増収でコスト増を吸収した丸亀製麺の強さの源泉は、店内製麺という「見せる調理」の体験価値です。
効率化のため調理工程は集約され、店頭は提供の場になっている
調理の見える化が体験価値となり、価格と利益率を支えている
何が起きたか
丸亀製麺を擁するトリドールホールディングスは2026年5月15日、2026年3月期決算を発表しました。売上収益は前期比3.9%増の2787億円で過去最高、営業利益は21.9%増の105億円。国内の丸亀製麺は、原材料コストの上昇を増収で吸収し、過去最高のセグメント利益を確保したと報告されています。海外事業もアジアを中心に過去最高益でした。
顧客は誰で、何に困っていたか
顧客は、昼食や家族の食事を手早く、しかし妥協せずに済ませたい生活者です。ファストフードの速さと安さはありがたいけれど、どこか「工場でつくられたものを受け取っている」感覚が残る。かといって専門店の打ち立てうどんは、日常使いには敷居も価格も高い。「日常の速さと価格で、専門店の本物が食べたい」という、本来両立しないはずの欲求が、満たされないまま残っていました。
付加価値の構造──厨房を舞台にする
丸亀製麺の答えは、セントラルキッチンを持たず、各店に製麺機を置き、粉からうどんをつくる工程を客席から見えるように配置したことです。機能は店内製麺と打ち立て・茹でたての提供。便益は、出来たての一杯を目の前で、行列がテンポよく進むセルフ方式の手頃さで味わえること。価値は、「ちゃんとつくられたものを食べている」という納得、ライブ感のある専門店体験です。
注目すべきは、店内調理という一見非効率な選択が、そのまま差別化の壁になっている点です。効率だけを競うなら集約調理に軍配が上がりますが、集約した瞬間に「目の前でつくられる」価値は消えます。他社が簡単には真似できないのは、設備や技術ではなく、非効率を価値に変える設計思想そのものです。増収がコスト増を飲み込んで最高益に至った背景には、この体験価値が支える来店動機の強さがあると考えられます。
値決めへの接続
「できたて」の価値は、価格転嫁の受け皿としても機能します。原材料が上がったとき、工場品の値上げは「同じものが高くなった」と受け取られがちですが、目の前の職人仕事への支払いは、価値の実感に紐づいているため納得を得やすい。トリドールが増収で吸収しつつ利益率を高められたのは、単価と客数の両方を体験価値が下支えしているからでしょう。効率化で削るコストと、価値のために残すコストの線引きこそが、値決めの土台になります。
今日の問い
あなたの会社では、顧客に見せることで価値に変わる「工程」が、効率化の名のもとに裏側へ隠れていないでしょうか。品質のためにかけている手間があるなら、それを顧客の見える場所に置き直すだけで、価格の根拠が一つ増えるかもしれません。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。


