
スシローはなぜ安さ競争を抜けられたのか
スシローを展開するFOOD & LIFE COMPANIESの2026年9月期は、営業利益485億円(前期比34%増)、純利益300億円(同31%増)を見込みます。国内既存店は9%増。水産資源の調達難で業界が付加価値競争へ移るなか、規模と体験設計が単価上昇と満足を両立させています。
1皿の価格でしか比べられず、値上げが客離れに直結する
体験と調達力で選ばれ、値上げと客数増が両立している
何が起きたか
スシローを展開するFOOD & LIFE COMPANIESは、2026年9月期の連結純利益(国際会計基準)が前期比31%増の300億円になる見通しを示しました。売上収益は18%増の5050億円、営業利益は34%増の485億円の予想です。国内スシローの2025年10月〜2026年3月の既存店売上高は前年同期比9%増。日本経済新聞は、水産資源の調達難易度が上がるなか、業界が安売り競争から調達力とブランド力を背景にした付加価値競争へシフトしていると報じています。
顧客は誰で、何に困っていたか
回転寿司の顧客は、家族連れや友人同士で気軽に外食を楽しみたい人たちです。原材料高で各社が値上げを迫られるなか、その困りごとは「1皿いくらか」だけではありません。値上げが続くと、外食そのものへの足が鈍る。だからこそ顧客が本当に求めているのは、「払った額以上に満たされた」と感じられる時間です。同じ100円でも、ただ皿が流れてくるのか、家族で盛り上がれる時間になるのかで、価値はまったく変わります。
付加価値の構造──皿の値段を「過ごす時間」に変える
FOOD & LIFEの数字が示すのは、値上げしながら既存店が9%伸びるという、一見矛盾した事実です。これは価格を上げても客が離れない構造ができていることを意味します。
分解しましょう。機能は、クイズやゲームを楽しめる大型ディスプレー「デジロー」と、広域の調達網。便益は、食事が子どもも楽しめる遊びを含む体験になり、鮮度と品揃えが安定して保たれること。そして価値は、「価格ではなく、また来たい体験だからこの店を選ぶ」という指名です。皿単価の議論から、過ごす時間の質へと、顧客の判断軸そのものが移っています。
さらに水産資源の調達が難しくなるほど、規模を持つ同社の調達力は差別化の源泉になります。安く仕入れて安く売る競争ではなく、安定して良いものを出せる力が、そのままブランドの信頼へ変換されているのです。
値決めへの接続
多くの外食企業が、原価高騰分をそのまま値上げに反映し、客離れとの綱引きに苦しんでいます。FOOD & LIFEの構造はここが違います。値上げと同時に体験価値を高め、調達力で品質を担保する。顧客から見れば「高くなった」ではなく「体験の質が上がった」に映ります。価格転嫁を顧客の便益とセットで提示できているからこそ、値上げが客数増と両立し、営業利益34%増という形で回収されています。値上げの成否は、価格の数字ではなく、その裏に積み増した価値を顧客が感じ取れるかで決まります。
今日の問い
あなたの会社の商品は、価格でしか比べられていないでしょうか。値上げのたびに客数が減るなら、価格に見合う価値の物語が顧客に届いていないのかもしれません。値上げ分を、顧客が実感できる体験や安心にどう翻訳するか──そこに、価格競争を抜ける鍵があります。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。


