
ライアンエアー、運賃1割戻して最高益の値決め
2026年度の税引後利益は22.6億ユーロと過去最高、前年比約40%増。平均運賃50.60ユーロへ約10%の回復と、1人24ユーロの付帯収入。最安値企業の利益の源泉を分解します。
低価格を武器にすると、利益は薄いままだと考えられている
本体価格と付帯価値が分けて設計され、低価格でも利益が出ている
何が起きたか
ライアンエアーは2026年5月18日、2026年度(2026年3月期)の税引後利益が過去最高の22.6億ユーロ(前年比約40%増)になったと発表しました。前年に約7%下落した平均運賃は約10%回復して50.60ユーロに。旅客数は約4%増の2億800万人、1人あたり付帯収入は24ユーロでした。
顧客は誰で、何に困っているか
顧客は、欧州域内を頻繁に移動する旅行者と帰省客です。彼らの困りごとは明快で、「移動にお金をかけたくない、しかし移動しないという選択肢はない」こと。ライアンエアーはこのニーズに対し、平均50.60ユーロという運賃で応えています。注目すべきは、運賃を1割戻しても2億人超が搭乗した事実です。顧客は「最安であること」に依存しているのではなく、「予算内で確実に移動できること」に価値を感じている。この差は値決めにおいて決定的です。
付加価値の構造──「安さ」は戦略であって、結果ではない
価格競争に巻き込まれる会社と、価格を武器にする会社は違います。前者は競合に合わせて価格が決まり、利益が削られる。後者は、誰にも真似できないコスト構造を先につくり、最安の座を自分の意思で維持します。
- 競合に合わせて運賃が決まる
- 安さの代償を利益で払う
- 最安の座を守れるコスト構造が先にある
- 荷物や座席指定など付帯価値で回収する
さらにライアンエアーは、本体(座席)と付帯価値(手荷物、座席指定、優先搭乗)を分離しました。移動だけでいい顧客には最低価格を、快適さや確実性がほしい顧客には追加の選択肢を売る。1人あたり24ユーロの付帯収入は運賃の約半分に相当し、利益の柱になっています。機能の分解が、顧客ごとに異なる支払意思をすくい上げる仕組みに変換されているのです。
値決めへの接続
今回の最高益の直接の要因は、運賃の約10%回復です。ここに値決めの本質があります。需要が堅調で搭乗率が維持できると確認できた局面で、下げていた価格を戻す──低価格企業であっても、利益は最終的に「価格を戻す・上げる」意思決定からしか生まれません。安さで集客し、需要の強さを確かめてから価格を適正化し、付帯価値で上乗せする。この三段構えは、価格競争の激しい業界でも値決めの主導権を握れることを示しています。
今日の問い
あなたの会社が「安くしている」のは、戦略でしょうか、それとも競合への反応でしょうか。そして商品に含まれる機能を分解したとき、別料金で喜んで買われる価値が眠っていないでしょうか。低価格と高収益は、設計次第で両立します。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。


