
ポップマート、熱狂の後に問われる付加価値
「Labubu」で世界的ブームを起こしたポップマートの中国国内オンライン売上が5月に前年比5%減。熱狂が生む価格プレミアムと、構造が生む付加価値の違いを考える教材です。
ブームによる高値を実力と捉え、次の価値づくりが後回しになりがち
熱狂が去っても選ばれる理由が設計され、価格が維持されている
何が起きたか
キャラクター「Labubu(ラブブ)」の世界的ブームで急成長した中国のポップマートについて、South China Morning Postは2026年6月18日、同社の5月の中国国内オンライン売上が前年同月比5%減と、2024年以来初めてのマイナスに転じたと報じました。4月比では14%減、昨年下半期の月平均と比べると25%低い水準です。一方、第1四半期の中国本土売上は前年比100〜105%増と、なお高成長でした。
顧客は誰で、何に困っているか
顧客は、キャラクターに癒やしと自己表現を求める若い世代です。ブラインドボックス(開けるまで中身が分からない販売形式)は、「何が出るか」というときめきと、レアを引き当てたときの高揚、SNSで見せ合うつながりを提供してきました。ただしブーム期の顧客には、二つの動機が混在していました。キャラクター自体への愛着と、「手に入りにくいものを手に入れた」という希少性の興奮です。前者は続きますが、後者は熱狂の温度が下がれば消える。今回の数字は、その二層構造が見え始めたことを示しています。
付加価値の構造──熱狂プレミアムと構造プレミアムを見分ける
品薄、行列、転売価格の高騰。これらはブーム期には付加価値の証明に見えます。しかし転売価格を支えていたのが「今しか買えない」という切迫感だけなら、それは熱狂プレミアムであり、企業の実力として恒常的に見込める価格ではありません。
- 品薄と転売が価値の源泉
- ブームの終息とともに価格が崩れる
- キャラクターへの愛着と物語が価値の源泉
- ブーム後も定価で指名買いされ続ける
一方でポップマートには構造的な資産もあります。自社発掘のアーティストによる独自IP群、世界に広がる直営店網、そしてキャラクターへの愛着で買い続けるファン層です。第1四半期の本土売上倍増という数字と5月の減速が併存する今こそ、どこまでが構造でどこからが熱狂だったのかを腑分けする局面です。アナリストからは競争激化と熱狂の沈静化が成長を圧迫するとの指摘も出ています。
値決めへの接続
ブーム型ビジネスの値決めで危険なのは、熱狂期の実勢価格(転売価格や即完売)を基準に、生産計画や定価を引き上げてしまうことです。熱狂が去れば、在庫と値引きが待っています。逆に、定価は愛着で買い続けるファンが納得する水準に置き、希少性は限定コラボなどで意図的に演出する──熱狂を定価に織り込まず、演出として使い分けることが、ブームの後も価格を守る道だと考えられます。
今日の問い
あなたの会社の今の売れ行きのうち、何割が構造で、何割が追い風でしょうか。追い風の分まで価格や能力増強に織り込んでいないでしょうか。好調な今こそ、「風が止んでも選ばれる理由」を言語化する好機です。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。


