
マツキヨココカラ、PBと化粧品が生む最高益
マツキヨココカラの2026年3月期は営業利益849億円で過去最高。化粧品は7.9%増と全社を上回る伸びで、PBや専売品の強化が粗利率を押し上げました。「そこでしか買えない」の値決め効果を解説します。
売れ筋のNB商品は他社でも買えるため、価格で比較されている
そこでしか買えない商品が、粗利と来店理由の両方を生んでいる
何が起きたか
マツキヨココカラ&カンパニーは2026年5月13日、2026年3月期の決算を発表しました。売上高は1兆1174億円(前期比5.3%増)、営業利益は849億円(3.5%増)で過去最高です。化粧品の売上は3812億円(7.9%増)と全社を上回る伸びを示し、PB(プライベートブランド)や専売品、高付加価値商品の販売強化により、売上総利益率は0.3ポイント上昇して36.1%となりました。
顧客は誰で、何に困っているか
顧客は、美と健康に日常的に投資する生活者、そして訪日客です。ドラッグストアの店頭には無数の選択肢が並びますが、そこにこそ困りごとがあります。「種類が多すぎて、自分の肌や体に合うものが分からない」。さらに、どの店でも同じNB(ナショナルブランド)商品が並ぶなら、顧客にとって店を選ぶ理由は価格と立地しかなくなります。マツキヨココカラが応えているのは、「選べない」という顧客の悩みと、「選ばれる理由がない」という業界構造の悩みの両方だと考えられます。
付加価値の構造──「そこでしか買えない」が粗利と来店理由を同時につくる
決算の要点は、粗利率0.3ポイント上昇の中身です。値上げではなく、PB・専売品・高付加価値商品という「商品の中身の入れ替え」で粗利率を上げています。
機能は、PB・専売品を含む美容の専門性ある品揃え。便益は、他では買えない選択肢の中から、自分に合う商品に迷わず出会えること。価値は、「ここに行けば間違いない」という指名来店です。
PBと専売品には二重の効果があります。第一に、他社と価格を比較されないため、値引き圧力から自由になり粗利率が守られる。第二に、その商品を目当てに顧客が来店するため、店自体の差別化になる。つまり1つの商品開発が、利益率と集客の両方に効くのです。化粧品カテゴリーが全社平均を上回って伸びていることは、この専門性への投資が顧客に受け入れられている証拠と言えます。
値決めへの接続
ドラッグストア業界は、NB商品の安売り競争で集客する構造が長く続いてきました。マツキヨココカラの決算が示すのは、その先の回収設計です。NBの価格対応で来店の間口を保ちながら、利益はPB・専売品・化粧品の高粗利ミックスで回収する。値決めの主導権は、自社にしか値段をつけられない商品の比率に比例します。粗利率の上昇は、その比率が着実に高まっていることの表れです。
もちろんPBには、開発の手間と在庫リスクという代償があります。しかし、そのリスクを引き受けた企業だけが、価格決定権という見返りを手にします。次期も増収増益を計画していることから、この構造転換は一過性の施策ではなく、既定路線として続くと考えられます。
今日の問い
あなたの会社の売上のうち、「自社にしか値段をつけられない商品・サービス」は何割でしょうか。他社と同じものを売る限り、値決めの主導権は市場に握られたままです。顧客の「選べない」という悩みに専門性で応える独自商品を一つ育てること──それが粗利率と指名買いを同時に手に入れる道です。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。

