
ファミマの服はなぜ「指名買い」されるのか
ファミリーマートのアパレル「コンビニエンスウェア」が5周年。2026年夏はメキシコをテーマに、税込1998円の機能Tシャツが初登場します。緊急需要の間に合わせ品を指名買いブランドに変えた構造を解説します。
ついで買いの商品は、安さと手軽さだけで選ばれている
デザインと品質への信頼が、指名買いされるブランドを育てている
何が起きたか
ファミリーマートは2026年5月27日、オリジナルアパレル「コンビニエンスウェア」の2026年夏新作を発表しました。テーマはメキシコ文化に着想を得た色鮮やかなラインアップ。定番のラインソックス(税込429円)や今治タオルハンカチに加え、脇の縫い目をなくした機能Tシャツ(税込1998円)が初登場します。好評だった腕時計は、多数のリクエストを受けて今秋に再販予定です。ブランドは2021年の立ち上げから5周年を迎えました。
顧客は誰で、何に困っているか
コンビニで服を買う場面は、もともと「緊急事態」でした。出張先で靴下を忘れた、急な雨や汚れ──顧客は仕方なく、間に合わせの品を買っていました。そこにあったのは「買えるだけありがたいが、積極的には選ばない」という消極的な需要です。しかしその裏に潜在ニーズがありました。「わざわざ服屋に行く時間はないが、身につけるものに妥協はしたくない」。ファッションデザイナーの落合宏理氏と組んだコンビニエンスウェアは、この「近さと品質は両立しない」というあきらめを崩しにいったブランドだと考えられます。
付加価値の構造──緊急需要を「指名買い」に変える
コンビニエンスウェアのコンセプトは「いい素材、いい技術、いいデザイン。」です。今治タオル、成型編みで縫い目をなくしたTシャツなど、素材と製法は本格派。それが全国のコンビニという「徒歩圏の棚」に並びます。
- 安ければ何でもいい
- ブランド名は記憶されない
- 色とデザインを選びに来る
- 再販リクエストが届く
機能は、デザイナー監修の衣料品を24時間・徒歩圏で提供すること。便益は、思い立った瞬間に、妥協のない品質の服が手に入ること。価値は、「コンビニの服」という言い訳ではなく「これが欲しかった」と言える選択肢です。同社は2026年2月の5周年発表で、ソックスの累計販売が3000万足を突破したことを明らかにしています。緊急の間に合わせ品が、色柄を選んで買われる定番に変わった規模感が分かります。
2026年にはブランド初のテレビCM放映にも踏み切り、5年かけて「コンビニの一角の棚」から独立したブランドへ育てる投資が続いています。売場から生まれたPBが、広告を打つ価値のあるブランドに育った例は、コンビニ業界でも稀有です。
ブランド初の「腕時計」は、多数のリクエストに応えて今秋の再販が決まりました。コンビニの棚の商品に「もう一度売ってほしい」という声が集まる──これは指名買いの何よりの証拠です。
値決めへの接続
注目すべきは価格帯です。機能Tシャツは税込1998円、ポロシャツは2990円。「コンビニだから安く」ではなく、専門店の同等品と比べても妥協のない品質に見合う価格がつけられています。コンビニの立地と時間の利便性は、本来アパレル専門店にはない付加価値です。その価値を値引きの言い訳にせず、品質・デザインの価値と足し合わせて価格に載せる。緊急需要で入ってきた顧客がデザインのファンになり、指名買いとリピートで回収する構造です。
今日の問い
あなたの会社にも、「仕方なく買われている」商品はないでしょうか。緊急対応、補修部品、付帯サービス──消極的な需要は、品質とデザインへの本気の投資で「指名買い」に変わる余地を残しています。顧客が言い訳しながら買っているものこそ、ブランドが生まれる場所かもしれません。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。

