
ヤオコー、37期連続増収増益を生む「おいしさ」
ヤオコーが37期連続の増収増益を達成。既存店売上4.2%増を上回る勢いでPBが9.1%伸びました。価格競争の激しい食品スーパーで、「おいしさ」を売る戦略がなぜ利益を生み続けるのかを解説します。
特売と価格の安さを軸に競合と比較され、粗利が伸びにくい
おいしさという価値で選ばれ、価格と利益が両立している
何が起きたか
ブルーゾーンホールディングスは2026年5月11日、2026年3月期の決算を発表しました。グループの営業収益は8131億円(前期比10.4%増)、営業利益は363億円(9.0%増)。中核のヤオコーは営業収益6373億円(8.0%増)、既存店売上高4.2%増で、37期連続の増収増益を達成しました。PB(プライベートブランド)売上は9.1%増と、全体を上回る伸びです。
顧客は誰で、何に困っているか
顧客は、毎日の食卓を担う家庭です。物価高が続く中、顕在ニーズは「食費を抑えたい」。しかし食品スーパーの現場には、もう一つの声なきニーズがあります。「毎日の献立を考えるのがつらい」「節約しても、食事の質は落としたくない」。安さだけを求めるなら選択肢はいくらでもあります。それでもヤオコーが選ばれ続けるのは、この「節約と食の楽しみの両立」という困りごとに正面から応えているからだと考えられます。
付加価値の構造──価格ではなく「おいしさ」にフォーカスする
今回の決算で報じられたヤオコーの商品戦略は、「おいしさにフォーカス」した商品開発です。ミニトマトのような生鮮の一品から、銀鮭西京味噌焼弁当のような惣菜まで、味を基準に独自商品を磨き込んでいます。
機能は、献立提案型の売場と「おいしさ」に絞った独自商品の開発。便益は、顧客が悩まずに、おいしい食卓を手頃に整えられること。価値は、物価高でも食の楽しみをあきらめなくていい安心です。
構造上の要点は、PBの伸び率(9.1%増)が既存店全体(4.2%増)を2倍以上上回っていることです。PBは一般に、NB(ナショナルブランド)より粗利率が高く、他店と価格を比較されません。つまりPBが伸びるほど、「価格で比較されない売上」の構成比が上がり、利益体質が強くなります。顧客がPBを選ぶ理由が「安いから」ではなく「おいしいから」であれば、この売上は競合の特売では崩れません。37期連続増収増益という記録は、価値で選ばれる売上を毎年積み増してきた結果と言えます。
値決めへの接続
ヤオコーの値決めは「価値ある商品で客単価と粗利を確保する」構造です。一方でグループにはディスカウント業態のフーコットもあり、価格対応そのものを放棄しているわけではありません。重要なのは役割分担です。価格で応える器と、価値で応える器を分け、本体のヤオコーは「おいしさ」の値段を守る。安さの土俵と価値の土俵を混ぜないことが、粗利率を守る値決めの技術だと考えられます。
今日の問い
あなたの会社の商品のうち、「競合と価格を比較されない売上」は何割あるでしょうか。顧客があなたの会社を選ぶ理由が「安いから」だとしたら、その売上は競合の値下げ一つで揺らぎます。自社ならではの「おいしさ」に当たる価値は何か。それを軸にした商品が全体を上回る速度で伸びているか──成長の質を測る物差しはそこにあります。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。


