
ティア、葬儀単価の変化が教える価値の守り方
葬儀会館ティアの2026年9月期中間期は、葬儀件数の減少と単価の低下で減収減益。需要の波に業績が左右される局面こそ、「なぜ自社が選ばれるのか」という価値の根拠が単価を支える構造が問われます。
市場の需要増に支えられ、単価の根拠を問われずに済んでいる
需要が波打っても、選ばれる理由が単価を支えている
何が起きたか
葬儀会館「ティア」を展開するティアは2026年5月、2026年9月期中間期(2025年10月〜2026年3月)決算を発表しました。売上高は114.22億円(前年同期比1.4%減)、経常利益は9.09億円(同42.3%減)で期初計画に未達。直営の葬儀件数は10,308件(同3.6%減)と計画を9.5%下回り、既存店では件数減少で3.7億円、単価低下で0.67億円の減収要因となりました。
顧客は誰で、何に困っていたか
葬儀の顧客は、大切な人を亡くした直後のご遺族です。深い悲しみの中で、限られた時間に多くの判断を迫られる。相場が分かりにくく、比較検討の余裕もない中で、「適正な価格で、故人にふさわしい見送りができるか」という不安が困りごとの中心にあります。ティアはかねて価格の明朗化を掲げ、この不安に応えることで名古屋を地盤に支持を築いてきた会社です。一方で近年は、家族葬の浸透など葬儀の小規模化が進み、顧客が求める形とかける金額は多様化しています。
付加価値の構造──追い風が止まると、構造が見える
今回の決算の背景として、2025年後半以降は死亡数が前年比で減少に転じ、葬儀業界全体で需要が落ち込んだこと、地盤の名古屋市内では競争激化でシェアが若干低下したことが説明されています。ここに、サービス業全般への構造の学びがあります。
- 件数の伸びが業績を押し上げる
- 価格を細かく問われにくい
- 単価と選ばれる理由が問われる
- 比較検討され競争が強まる
需要が増えている間は、件数の伸びが業績を押し上げ、単価の根拠は厳しく問われません。しかし需要が減る局面では、顧客は選択肢を比較し、競合は価格で動きます。件数と単価が同時に圧力を受けたとき、業績を支えるのは「この会社に頼みたい」という指名の理由──つまり平時に蓄積した信頼と、価格に納得できる価値の説明です。同社が件数の回復によって通期計画の達成を目指すと表明しているのも、単価を安易に崩さず、選ばれる力で立て直す方針の表れと考えられます。
値決めへの接続
注目すべきは、減収要因の内訳です。件数減少の影響(3.7億円)に対し、単価低下の影響は0.67億円にとどまっています。需要の逆風下でも単価の下落を小幅に抑えられているのは、価格の明朗さと葬儀の質への信頼が、値引き競争への防波堤として機能しているためと考えられます。値決めの観点では、苦しい時に価格を守れるかどうかは、苦しくなる前に価値の根拠を積み上げていたかで決まります。単価は、下げるのは一瞬、戻すのは何年もかかる数字だからです。
今日の問い
あなたの会社の業績は、市場の追い風と自社の実力を分けて説明できるでしょうか。需要が増えている間に、顧客が自社を指名する理由を言葉にし、価格の根拠として積み上げているか。追い風が止まった日に単価を守ってくれるのは、その蓄積だけです。今期の増収のうち「価値による分」は何割か、一度分解してみてください。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。


