
積水ハウス、注文住宅の単価上昇が続く理由
積水ハウスの2027年1月期第1四半期は増収増益。前期の注文住宅は1棟平均単価が5,248万円から5,642万円へ上昇しました。性能と提案力を「安心」に変換する高付加価値シフトが、値上げと満足の両立を支えています。
建築費の上昇分を価格に反映できず、利益率が細っている
性能と提案の価値が単価に転嫁され、値上げと満足が両立している
何が起きたか
積水ハウスは2026年6月4日、2027年1月期第1四半期決算を発表しました。売上高は9,088億円(前年同期比1.7%増)、営業利益は761億円(同26.2%増)。前期の2026年1月期は売上高・利益とも過去最高を更新しており、住宅新報webの決算報道によれば、注文住宅の1棟平均単価は5,248万円から5,642万円へ上昇しています。
顧客は誰で、何に困っていたか
注文住宅の顧客は、一生に一度といえる金額を投じる家族です。建築費と住宅ローン金利の上昇が続くいま、顧客の困りごとは「少しでも安く建てたい」だけではありません。本質は「これだけ払って後悔しないか」という不安です。断熱性能、耐震性、間取りの使い勝手、数十年後の資産価値──判断材料が多すぎて自分では確かめきれないからこそ、価格表ではなく信頼できる提案者を探しています。この「後悔したくない」という潜在ニーズは、建築費が上がるほど、むしろ強くなります。
付加価値の構造──性能と提案力を「安心」に変換する
積水ハウスの決算資料では、注文住宅ならではの高付加価値提案と高価格帯へのシフトが奏功し、1棟単価の上昇とともに利益率が改善したと説明されています。1棟あたり約400万円の単価上昇を顧客が受け入れているのは、値上げ分が顧客の便益に変換されているからです。
構造を分解しましょう。機能は、高断熱・耐震といった住宅性能と設計提案力。便益は、光熱費の低減と快適な暮らしが長く続くこと。そして価値は、「一生に一度の買い物で失敗しない」という安心です。
坪単価の比較表では、この安心は見えません。性能とライフスタイル提案の中身で比較軸そのものを動かすことで、同社は価格競争とは別の土俵に立っていると考えられます。
値決めへの接続
資材高騰の局面では、多くの住宅会社がコスト上昇分の転嫁に苦心しています。今回の第1四半期でも同社は、中東情勢に伴う資材価格上昇の懸念に触れつつ、通期予想を据え置きました。注目すべきは値上げの順序です。原価の上昇を理由に価格だけを引き上げるのではなく、性能向上と提案力の強化をセットにして単価を上げる。顧客から見れば「高くなった」ではなく「良いものを選んだ」に変わります。コスト転嫁ではなく価値転嫁で単価を上げる構造が、増益という形で回収されています。値上げの理由を自社の事情(原価)ではなく顧客の便益で語れるかどうかが、受注住宅という高額サービスの分かれ目だといえます。
今日の問い
あなたの会社の見積書は、顧客のどんな不安を消しているでしょうか。原価が上がったから値上げする、という説明は顧客の価値と無関係です。値上げ分を顧客の便益──安心、快適、失敗しない確信──に翻訳できたとき、単価の上昇は顧客満足と両立します。自社の「単価アップの物語」を、顧客の言葉で語れるか試してみてください。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。


