世界のニュースを、付加価値のレンズで読み解く ─ 株式会社カクシン

美容室の客単価が過去最高になった理由

サービス業美容客単価高付加価値化

リクルートの「美容センサス2025年上期」で、美容室の1回あたり利用金額が女性7,668円・男性4,879円と過去5年で最高を更新しました。値上げだけでなく、髪質改善やヘッドスパなど高付加価値メニューの選択が単価を押し上げています。

現状

カット単価の値上げか客数増か、二択で単価を伸ばそうとしている

理想

顧客が困りごとを解く追加メニューを選び、単価が自然に上がっている

何が起きたか

リクルートのホットペッパービューティーアカデミーが2025年6月に発表した「美容センサス2025年上期」で、美容室の1回あたり利用金額が女性7,668円・男性4,879円と、いずれも過去5年で最高額を更新しました。美容室市場は1兆3,884億円とここ5年で最大。単価上昇の背景として、物価高だけでなく、縮毛矯正やまつげメニューなど単価の高い施術を併せて提案する「クロスセル」の増加が挙げられています。

美容室 1回あたり利用金額(2025年上期)(円)
4,879 男性 7,668 女性
出典: リクルート 美容センサス2025年上期

顧客は誰で、何に困っていたか

美容室の顧客が抱える困りごとは、「髪を切る」だけでは終わりません。うねりやくせで朝のスタイリングに時間がかかる、頭皮の疲れが取れない、白髪が気になる、眉の形が決まらない──こうした個別の悩みは、以前なら「そういうもの」として放置されるか、別の店を探すしかありませんでした。顧客は、自分の悩みを丸ごと解いてくれる一つの場を求めています。同時に美容室側は、人件費(2025年度の最低賃金は全国加重平均1,121円へ過去最大の引き上げ)や薬剤コストの上昇に直面し、カット料金の値上げだけでは失客が怖い、という板挟みにありました。

付加価値の構造──「値上げ」ではなく「選択肢の追加」で単価が上がる

ここに、単価の上げ方の分岐点があります。

機能
髪質改善・ヘッドスパ・眉カットなどの選べるメニュー
便益
「価格が上がった」でなく「解きたい悩みに応えるメニューが増えた」
価値
顧客が納得して自ら選ぶ、指名される単価

同じ「単価を上げる」でも、二つのやり方はまったく違います。カット料金そのものを値上げすると、顧客には「同じサービスが高くなった」としか映りません。一方、髪質改善トリートメントやヘッドスパ、パーソナルカラー診断といったメニューを増やすと、顧客は「価格が上がった」ではなく「選べるメニューが増えた」と受け取ります。しかもそれぞれが具体的な悩みに応えている。だから顧客は自分の意思で追加を選び、その分だけ単価が上がる。値上げに伴う抵抗感が生まれにくいのが、この構造の強みです。

値上げで単価を上げる
  • カット料金の改定を顧客にお願いする
  • 上げれば失客リスクが先に立つ
価値提案で単価を上げる
  • 悩みに応えるメニューを顧客が自ら選ぶ
  • 選ばれた分だけ単価も満足も上がる

値決めへの接続

サービス業では人件費上昇が価格転嫁につながりにくい、という課題が指摘されてきました。カット料金という「基本価格」だけで転嫁しようとすると、顧客の抵抗が大きいからです。美容室が示しているのは、基本価格を守りながら、悩みに応える高付加価値メニューを積み上げて客単価を伸ばす道です。値決めの主導権を「一律の値上げ」ではなく「顧客が選ぶ追加提案」に置くことで、単価と満足を同時に上げられます。実際、値上げ後も多くの顧客が利用を継続しているという業界データもあります。

今日の問い

あなたの会社は、単価を上げるとき「既存の商品を値上げする」ことばかり考えていないでしょうか。顧客が本当に困っている隣接の悩みに、まだ値段のついていない解決策があるかもしれません。基本価格を守りながら「選ばれる追加提案」を用意できれば、値上げの抵抗を避けつつ単価を伸ばせます。顧客の困りごとの棚卸しから始めてみてはいかがでしょうか。

本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。

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