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8月の値上げ2311品目、理由が変わった

マクロ・調査値決め価格転嫁値上げ調査交渉

帝国データバンクの調査で、8月の食品値上げは2311品目と前年同月の8割増。中身を見ると、上がっているのは原料そのものより、包む・運ぶための費用です。同じ改定率でも、通る会社と通らない会社が分かれます。

現状

値上げの理由を、自社のコスト上昇として説明している

理想

値上げの理由を、顧客が社内で説明できる言葉で渡している

何が起きたか

帝国データバンクが2026年7月31日に発表した「食品主要195社 価格改定動向調査」によると、8月に値上げされる飲食料品は2,311品目。前年同月の1,262品目から8割増えました。7月の2,664品目に続き、2カ月連続で2,000品目を超えています。

分野別では加工食品(ハム・ソーセージ、カップ麺、缶詰など)が1,419品目で最多、次いで調味料589品目、原材料276品目。

同社は要因として、中東情勢の悪化による原油・ナフサ高が、トレーやフィルムの資材価格、原材料高、物流コストに波及したことを挙げています。

食品の値上げ品目数の推移(品目)
1,262 2025年8月 2,664 2026年7月 2,311 2026年8月
出典: 帝国データバンク「食品主要195社 価格改定動向調査」(2026年7月31日発表)

顧客は誰で、何に困っていたか

まず、この数字の読み方を一つ変えておきたいと思います。

品目数は「値上げに成功した数」ではありません。「値上げを申し入れた数」です。申し入れが受け入れられたかどうか、受け入れられた後に数量が保てたかどうかは、この数字には表れません。

ここで、値上げを申し入れる相手のことを考えてみます。食品メーカーの直接の相手は卸や小売の購買担当者です。この人が困っているのは、値上げそのものではありません。社内で説明できないことです。

購買担当者は、価格改定を受け入れる際、自社の会議で説明を求められます。なぜこの会社だけ、なぜ今、なぜこの幅なのか。答えられなければ、判断は「もう少し待つ」か「他社にも当たる」に流れます。

つまり、値上げ交渉における顧客の潜在ニーズは、値段が安いことではなく、受け入れる判断を自分の組織で通せる材料が手元にあることです。ここが満たされないまま金額だけを提示すると、交渉は金額の押し引きに固定されます。

付加価値の構造——「理由の中身」が変わっている

今回の調査でもう一つ見ておきたいのは、値上げの理由の中身が動いていることです。

かつての値上げは、小麦や砂糖といった原料そのものの高騰が中心でした。今回、帝国データバンクが挙げているのは、トレーやフィルムといった資材、そして物流コストです。中身ではなく、包むものと運ぶものが上がっている。

この違いは、交渉のしやすさに直結します。原料高は、顧客も同じ相場を見ているので共通の前提になります。一方、資材や物流の上昇は自社の調達構造や配送条件に依存するため、顧客からは見えません。見えないコストは、そのままでは「そちらの都合」として扱われます。

機能
原価の内訳と改定の根拠を、品目単位で開示する
便益
顧客は「なぜ今、いくら」を自社の会議で説明できる
価値
値上げの承認が、顧客の社内で通るようになる

ここに、付加価値の観点から見た分かれ目があります。原価の内訳と改定根拠を品目単位で開示することは、コストではなく提供物の一部です。顧客はそれを自社の会議資料にそのまま使えるからです。

値上げの主語が、自社のコスト
  • 説明する相手は、購買担当者
  • 成否を、改定率が通ったかで測る
  • 次の原料高で、また同じ交渉をやり直す
値上げの主語が、顧客が得るもの
  • 説明する相手は、その先にいる使い手
  • 成否を、改定後の数量と継続で測る
  • 次の原料高は、あらかじめ仕組みに織り込む

同じ15%の改定でも、「原油が上がったので」とだけ伝える会社と、「この品目のトレー代が前年比でいくら上がり、御社の売価では何円の影響で、この時期に出すのはこういう理由です」まで渡す会社では、相手の社内で起きることが違います。前者は購買担当者が翻訳作業を引き受けることになり、後者は担当者の仕事を一つ減らしています。

値決めへの接続

回収の構造で言えば、この違いは改定率ではなく、改定後の数量と継続率に表れます。

コスト起因の値上げは、通ったとしてもそこで終わりです。次に原料や資材が動けば、また同じ交渉を最初からやり直すことになります。上がったコストを取り返しただけで、利益の構造は変わっていません。

一方、根拠の開示や見通しの共有をセットで渡している会社は、次の局面が違います。改定の理由が事前に共有されていれば、価格フォーミュラやサーチャージのような仕組みとしての改定に移行しやすくなります。都度の交渉ではなく、条件が動いたら自動で反映される形です。ここまで行けば、値上げは交渉事ではなく運用になります。

そのうえで、今回の数字が示していることを整理しておきます。2026年は1〜11月に判明している分だけで18,347品目、前年通年の20,609品目を上回る可能性があるとされています。値上げが珍しい出来事ではなくなった以上、「値上げしたかどうか」は差になりません。 差になるのは、その値上げが顧客の社内でどう扱われたか、そして次の改定の土台をどれだけ作れたかです。

今日の問い

直近の価格改定で、あなたの会社は顧客に何を渡したでしょうか。

金額の通知だけだったでしょうか。それとも、顧客が自分の上司に説明できる材料まで渡したでしょうか。

もし前者なら、次の改定までにできることがあります。改定の根拠を、顧客の会議でそのまま使える形に作り直しておく。 値上げの金額は変えずに、通り方だけを変えられる余地がここにあります。

参考: 帝国データバンク「食品主要195社 価格改定動向調査」2026年7月31日発表/流通ニュース「食品メーカー195社/8月は2311品目値上げ、中東情勢悪化が影響」(https://www.ryutsuu.biz/commodity/s073119.html)

本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。

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