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サービス価格3.2%上昇、値上げが通る条件

マクロ・調査値決め価格転嫁BtoBサービス価格指数付加価値

日本銀行が7月27日に公表した6月の企業向けサービス価格指数は前年比3.2%上昇。ただし内訳を開くと、職業紹介は5.5%、法務・財務・会計は0.6%と大きく分かれています。値上げの可否を決めているのはコストではない、という構造を読み解きます。

現状

人件費や原材料の上昇を根拠に、価格改定を交渉している

理想

顧客の成果への貢献を根拠に、価格の水準を説明できている

何が起きたか

日本銀行が2026年7月27日に公表した6月の企業向けサービス価格指数(速報、2020年平均=100)は114.3で、前年同月比3.2%の上昇でした。5月の3.4%からは伸びが縮小しています。企業間で取引されるサービスの価格をまとめた統計で、運賃、ソフトウェア開発費、派遣料金、保守料などが含まれます。

注目すべきは総平均ではなく、その内訳です。同じ6月に、職業紹介サービスは5.5%上昇し、法務・財務・会計サービスは0.6%の上昇にとどまりました。

同じ6月でも分かれたサービス価格の前年比(%)
5.5 職業紹介 3.9 自動車整備 3 ソフトウェア開発 0.6 法務・財務・会計
出典: 日本銀行 企業向けサービス価格指数(2026年6月速報)

顧客は誰で、何に困っていたか

この統計に登場する「顧客」は、サービスを買う側の企業です。彼らが困っているのは、値上げそのものではありません。値上げを社内で説明できないことです。

購買や現場の責任者は、値上げの通知を受け取ると社内で問われます。「なぜこの取引先だけ上げるのか」「他に替えられないのか」。このとき、売り手から渡された根拠が「人件費と燃料費の上昇のため」だけだと、買い手は答えを持てません。コスト上昇はどの取引先にも等しく起きているからです。値上げが通るかどうかは、買い手が社内で使える言葉を持てるかどうかにかかっています。

付加価値の構造──コストは値上げの根拠になっていない

今回の統計には、この点を示す参考系列が含まれています。人件費比率の高いサービスの前年比は2.7%、人件費比率の低いサービスは3.7%。人件費が重いサービスのほうが、価格上昇率は低いという結果です。

賃上げが進み、人件費が最も重くのしかかっているはずの領域で、価格の伸びはむしろ小さい。「コストが上がったから価格が上がる」という因果は、統計上そのままの形では成立していません。

多くの現場で使われている根拠
  • コストが上がったので価格を見直したい
  • 値上げ率を業界平均や指数で説明する
  • 交渉のたびに一から理解を求める
価格が通っている領域の根拠
  • 顧客の成果に対して、この水準が妥当である
  • 自社が肩代わりしている顧客の困りごとで説明する
  • 契約時点から成果の物差しが共有されている

品目別に見ると、分かれ目の輪郭がはっきりします。人手不足を直接埋める職業紹介サービスは5.5%、車両を止めないための自動車整備は3.9%、商品・非破壊検査・計量証明サービスは8.2%上昇しました。いずれも、買い手にとって「止まると困ること」に直結しています。

一方、法務・財務・会計サービスは0.6%、コールセンターは1.4%、洗濯は0.1%。専門性が低いわけではありません。買い手の側から見たときに、成果が自社の数字のどこに効いているかを結びつけにくいサービスです。

機能
自社が提供している作業・納品物そのもの
便益
それによって顧客の業務で何が起きるか(時間・不良・欠員が減る等)
価値
顧客がその状態を維持するために、継続して支払う理由

価格が動いた領域と動かなかった領域を分けているのは、提供する側の努力量ではなく、「顧客の困りごとのどこを肩代わりしているか」が両者の間で共有されているかどうかだと考えられます。

伸びの縮小要因も同じ構図で読めます。今回、総平均を押し下げた最大の要因は宿泊サービスで、前年比は5月の8.3%から6月は2.4%に落ちました。需要の強さで上げた価格は、需要が緩めば戻ります。テレビ・ラジオ広告に至っては前年比マイナス5.6%。価値の説明が「枠の希少性」に依存していた領域から、価格が先に離れていきます。

値決めへの接続

この統計から中堅・大企業の経営者が持ち帰れる論点は、次の一つに集約できます。自社の値上げは、コストの物語で説明されているか、顧客の成果の物語で説明されているか。

コストで説明する値上げは、コストが落ち着けば戻すよう求められます。実際、燃料価格の下落を受けて外航貨物輸送の上昇率は5月の61.8%から6月は52.8%へ鈍化しました。上げ幅が大きい領域ほど、根拠が外部要因にあるときは反転も速い。

回収の形は三つに分かれます。単価を上げて回収するか、取引の母数を増やして回収するか、契約期間を延ばして回収するか。職業紹介や検査・計量証明のように、顧客の「止まると困ること」を握っている領域は単価で回収できます。そうでない領域が単価だけで挑むと、価格は通っても関係が痩せます。まず、自社が顧客のどの数字に効いているのかを、顧客と同じ言葉で書けるようにすることが先です。

今日の問い

次の価格改定の通知文を、いま一度見てください。そこに書かれているのは、自社に起きたこと(原材料、人件費、燃料)でしょうか。それとも、顧客に起きること(止まらない、減らない、探さなくていい)でしょうか。

あなたの会社では、誰のどんな困りごとに値段がついているでしょうか。その答えを買い手の稟議に書ける言葉にできたとき、値上げは交渉ではなく説明になります。

参考: 日本銀行「企業向けサービス価格指数(2026年6月速報)」(https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cspi_release/sppi2606.pdf)

本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。

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