アイス、数量が減っても市場が伸びる理由
2025年度のアイスクリーム市場は6,631億円と6年連続で過去最高を更新しました。数量は前年比97.8%と減っているのに、金額は102.8%と伸びている。この「数量減・金額増」の逆転が、値決めの視点で見た付加価値化の教科書です。
数量を追い、安売りと販促で前年並みの売上を守っている
数量が減っても、単価と価値で市場全体が伸びている
何が起きたか
2025年度のアイスクリーム市場規模は6,631億円となり、6年連続で過去最高を更新しました(JMR生活総合研究所/日本アイスクリーム協会調べ)。ここで見逃せないのが、その中身です。販売数量は前年度比97.8%と前年を下回っているのに、金額は102.8%と伸びている。つまり「売れた個数は減ったのに、市場は大きくなった」のです。
背景にあるのは、価格改定に加えた商品の高付加価値化――氷菓タイプの拡充、新フレーバーの投入、主力ブランドのリニューアル、新ブランドの追加だと分析されています。数量ではなく、一本あたりの価値と価格で市場を伸ばした一年でした。
顧客は誰で、何に困っていたか
アイスの買い手は、猛暑で喉を潤したい人だけではありません。近年ふくらんでいるのは「ちょっとしたご褒美」として自分を満たしたい消費者です。彼らが本当に求めているのは「一番安い冷たいもの」ではなく、「今日の自分に見合った、少し贅沢な数分間」です。この潜在ニーズに応える限り、価格は選択の第一基準ではなくなります。原材料高で各社が値上げを迫られるなか、この層に届く商品こそが、値上げをしても選ばれ続けました。
付加価値の構造──「数量減・金額増」はなぜ起きたか
ここが記事の心臓部です。市場が数量で縮み、金額で伸びたという事実は、業界が「量を売るビジネス」から「価値を売るビジネス」へ静かに移ったことを意味します。
- 安く・たくさん売って前年を守る
- 値下げ・増量で数量を確保
- 数量が減れば売上も減る
- 高付加価値品で一人あたりの支出を増やす
- リニューアル・新ブランドで価値を上げる
- 数量が減っても金額は伸びる
同じ「アイスを売る」でも、値決めの発想はまるで違います。数量を追う発想では、暑さや天候に売上が振り回され、価格は下方向にしか動きません。一方、価値を追う発想では、フレーバーや体験、ブランドのリニューアルで「一本あたりに払ってよい金額」そのものを引き上げます。数量という土俵から降り、単価という土俵で戦った結果が、6年連続の過去最高でした。
値決めへの接続
多くの企業は「数量×単価」の数量側にばかり手を入れます。販促を打ち、増量し、値引きで棚を確保する。しかしそれは、単価を差し出して数量を買う行為であり、原材料が上がれば真っ先に利益が消えます。アイス市場が示したのは、その逆の回収経路です。数量が2%減っても、価値を高めて単価を上げれば、市場全体は伸びる。値上げを「数量を失う怖いもの」と捉えるか、「価値を認めてもらう機会」と捉えるか。その一点が、縮む市場と伸びる市場を分けました。
今日の問い
あなたの会社は、去年より多く売ることを目標にしていますか。それとも、一人のお客様がもう一段払ってよいと思う理由を増やすことを目標にしていますか。もし数量が減った瞬間に売上が崩れるなら、それは市場のせいではなく、単価で戦う準備ができていないだけかもしれません。あなたの商品は、「安いから」ではなく「これがいいから」で選ばれていますか。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。


