世界のニュースを、付加価値のレンズで読み解く ─ 株式会社カクシン

ミルボン、美容室市場が伸びずとも増益の理由

サービス業美容プロ向け製品増益構造

ミルボンの2026年12月期第1四半期は売上高11.0%増、営業利益75%超の増益。国内美容室市場の伸び悩みが続く中でも成長できるのは、サロンの付加価値を高めるプロ向け製品に軸足を置いているからです。

現状

市場全体の伸び悩みを、値引きと物量で補おうとしている

理想

顧客の単価向上への貢献が、自社の増益として返ってくる

何が起きたか

美容室向けヘア化粧品メーカーのミルボンは2026年5月15日付の決算説明資料で、2026年12月期第1四半期の業績を公表しました。売上高は124億1,500万円(前年同期比11.0%増)、営業利益は12億5,000万円(同75%超の増益)で、計画比でも売上高3.7%増、営業利益62.4%増と会社計画を上回りました。国内美容室市場の伸び悩みは続くと説明される中での増収増益です。

顧客は誰で、何に困っていたか

ミルボンの直接の顧客は美容室であり、その先には美容師の技術を求める生活者がいます。美容室業界は店舗数が多く競争が激しいうえ、市場全体の成長は鈍い──つまりサロンの経営者は、客数の拡大に頼れない環境で利益を出す方法を探しています。困りごとの本質は「良い商材が欲しい」ではありません。「一人のお客様からいただける単価を、満足度を上げながらどう高めるか」です。ヘアケアやカラーのメニューの質は、その答えを左右します。

付加価値の構造──顧客の「単価アップ」を売るメーカー

ミルボンの第1四半期は、ヘアケア用剤が底堅く推移し、染毛剤も前年並みの水準(0.5%減)まで回復しました。市場が伸びない中でこの数字が出る構造を分解すると、同社が売っているのは製品そのものではなく、サロンの付加価値向上だということが見えてきます。

製品を卸すメーカー
  • 価格と発注量で比較される
  • 市場の縮小と一緒に沈む
顧客の付加価値を高めるパートナー
  • 顧客の売上への貢献で選ばれる
  • 顧客の単価向上とともに成長する

機能は、プロの技術を前提にした高機能なヘアケア・染毛剤。便益は、サロンのメニューの仕上がりと単価が上がること。価値は、市場が伸びなくても稼げるサロン経営です。

機能
プロの技術を前提にした高機能なヘアケア・染毛剤
便益
サロンのメニューの仕上がりと単価が上がる
価値
市場が伸びなくても稼げるサロン経営

生活者から見れば、サロン専売品はドラッグストアの製品より高価です。それでも選ばれるのは、美容師という専門家の診断と技術を通じて手に入る「自分の髪に合う」という確信が乗っているから。メーカーの製品力と美容師の専門性が組み合わさって初めて成立する価値であり、この構造こそが価格競争からの防波堤になっていると考えられます。

値決めへの接続

市場が伸びない業界で増益を続ける方法は、突き詰めれば二つしかありません。シェアを奪うか、顧客単価を上げるか。ミルボンの構造は後者を顧客と共有する形です。サロンが高単価メニューで稼げるようになれば、その中核を担うプロ向け高機能製品は価格で買い叩かれにくくなる。顧客の値上げを支援することが、自社の価格維持と増益につながる──「顧客の値決め」を助ける事業は、自社の値決めも強くなるという好例です。通期でも売上高548億円、営業利益63億円と増収増益を見込んでいます。

今日の問い

あなたの会社の商品は、顧客の売上や単価をいくら上げているでしょうか。その貢献額を語れるなら、価格交渉の主導権はまだ手放さずに済みます。逆に、顧客のコスト削減の文脈でしか語れていないなら、値引き圧力から逃れるのは難しくなります。「顧客の儲けにどう貢献しているか」を金額で言えるようにする──そこから値決めは変わり始めます。

本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。

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