
明治ザバス、なぜ値上げしても選ばれるか
明治が「ザバス」など21品を6月から約6〜28%値上げしました。粉末プロテインの主力は2,959円から3,456円へ。それでも指名され続けるのは、たんぱく質という機能が「なりたい自分」という価値まで翻訳されているからです。
良い原料を使うほど、原料高がそのまま利益を削っている
機能ではなく「なりたい自分」に値段がつけられている
何が起きたか
明治は2026年6月1日出荷分から、「ザバス」などスポーツ栄養(粉末プロテイン17品・プロテインバー4品)の計21品を約6〜28%値上げしました。主力の「ザバス ホエイプロテイン100 リッチショコラ味280g」は希望小売価格が2,959円から3,456円になります。背景には物流コストの上昇に加え、世界的な健康志向の高まりで生乳由来のたんぱく原料価格が急騰していることがあります。
顧客は誰で、何に困っているか
顧客は、運動する人・体づくりをしたい人です。彼らが困っているのは「たんぱく質が不足している」という栄養素の問題であると同時に、もっと切実には「続かない」「何を選べばいいか分からない」という行動の問題です。たんぱく質は数字の上では他社製品と比較できます。しかし、毎日おいしく飲めるか、溶けやすいか、自分の目的に合っているか──ここでつまずくと、体づくりそのものが続きません。ザバスが向き合ってきたのは、この「続けられなさ」という潜在ニーズです。
付加価値の構造──「たんぱく質○g」を「なりたい自分」に翻訳する
構造を分解しましょう。機能は、良質なたんぱく質を手軽に補給できること。便益は、続けやすく、おいしく、迷わず選べること。そして価値は、「なりたい自分」に近づけるという実感です。
ザバスの強さは、機能を価値まで翻訳しきっている点にあります。溶けやすさ、味、目的別の栄養設計にこだわり、アスリートだけでなく日常的に運動する幅広い層へと顧客を広げてきました。プロテイン飲料の主力商品は売上を大きく伸ばし、ブランドとして市場でトップシェアの位置にあります。含有量という数字だけなら価格競争に巻き込まれますが、「これなら続けられる」という体験は簡単には真似できません。
値決めへの接続
たんぱく原料の価格急騰は、良い原料を使うブランドほど利益を圧迫します。ここで、含有量だけで選ばれる商品は値上げが即座に離反を招きます。一方ザバスのように「なりたい自分に近づける体験」で選ばれているブランドは、原料高という理由を顧客が受け止めやすい。約6〜28%という決して小さくない値上げ幅を提示できるのは、機能ではなく価値で選ばれているからです。値上げに耐えられる価格の根拠は、平時にどれだけ「体験の質」を積み上げてきたかで決まります。
今日の問い
あなたの会社の商品は、「含有量」や「スペック」で語られていますか、それとも「顧客がどうなれるか」で語られていますか。原料や機能で説明している限り、原料高はそのまま利益の目減りになります。機能を顧客の「なりたい姿」まで翻訳できているか──その翻訳の有無が、値上げできるかどうかを分けます。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。


