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USJ、値下げと「早い者勝ち」を同時に導入した訳

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USJは2026年9月入場分から1デイ・スタジオ・パスの最低価格を500円下げる一方、発売後に需要へ応じて価格が上がる新しい変動制を導入します。値下げと値上げを同時に設計する値決めの妙を読み解きます。

現状

価格は一度決めたら固定で、需要の強弱が収益に反映されていない

理想

需要のシグナルが価格に反映され、早期購入の顧客にも利益がある

何が起きたか

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、2026年9月1日入場分から1デイ・スタジオ・パスの最低価格を500円引き下げ、8,400円からとします。同時に、発売後もチケットの売れ行きに応じて日別価格が上昇する新たな変動制を導入。9月1日入場分は7月1日から発売されます。

USJ 1デイ・スタジオ・パス最低価格(円)
8,900 改定前 8,400 2026年9月入場分から
出典: あとなびマガジン(2026年6月30日)

顧客は誰で、何に困っているか

顧客は家族連れや若者グループ、そして訪日観光客です。彼らの困りごとは二つあります。一つは「行きたい日のチケットが高い」という価格そのものへの不満。もう一つは「いつ買えば損をしないのか分からない」という判断の負担です。従来の日別変動価格では、入場日ごとの価格は決まっていても、購入タイミングによる差はありませんでした。予定を早く決めた人も、直前に決めた人も同じ価格。つまり、計画的な顧客の行動は報われていなかったのです。

付加価値の構造──価格を「情報」に変える

今回の改定の本質は、値下げでも値上げでもなく、価格を需要の情報伝達装置に変えたことです。

発売直後の価格が最も安く、売れ行きに応じて上がっていく。この仕組みは顧客に「早く決めるほど得」という明確な行動指針を与えます。早期購入者には割安な価格という便益が、パーク側には需要の早期把握という便益が生まれます。来場計画が前倒しで確定すれば、混雑予測や人員配置の精度も上がり、当日の体験の質にも還元されうる構造です。

従来の値決め
  • 入場日で価格が決まる
  • 直前に買っても同じ価格
  • 売れ行きは価格に反映されない
新しい値決め
  • 入場日と購入タイミングで決まる
  • 早く買うほど安い
  • 需要に応じて発売後も価格が動く

注目すべきは、最低価格の500円値下げを同時に打ち出した点です。変動制の導入だけなら「実質値上げでは」という警戒を招きかねません。入口の価格を下げて心理的なハードルを下げつつ、需要の強い日・強いタイミングでは価格が自然に上がっていく。値下げの見出しと増収の実質を両立させる、緻密に設計された値決めと考えられます。

値決めへの接続

この価格構造では、収益の回収は「需要の強さに応じた自動的な単価上昇」で行われます。人気日程のチケットは発売後に価格が切り上がり、閑散日は低価格で需要を喚起する。つまり、高く売れる日に確実に高く売り、安くしないと売れない日は安くする。どの企業にも需要の濃淡は存在しますが、多くの会社はそれを単一価格で平均化してしまっています。USJは需要の濃淡をそのまま収益構造に写し取る仕組みを選びました。航空券やホテルでは常識だったこの考え方が、テーマパークの入場券にも本格的に及んだことになります。

今日の問い

あなたの会社の商品にも、「絶対に今ほしい」という顧客と「いつでもいい」という顧客が混在していないでしょうか。その両者に同じ価格を提示しているなら、前者からは取り逃し、後者は取りこぼしているかもしれません。需要の強さを価格に翻訳する仕組みを、自社ならどこに組み込めるでしょうか。

本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。

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