
ハウステンボス、体験に過去最大投資する理由
ハウステンボスは2027年に屋外ジェットコースターを開業予定で、投資規模は開業以来最大。4月開業のエヴァンゲリオン・アトラクションでは1カ月の来場者が前年同期比3割増。「体験」への投資が来場理由を生む構造です。
施設の魅力が景観や雰囲気にとどまり、再訪の動機になりにくい
「そこでしかできない体験」が複数そろい、来場理由を自ら設計できる
何が起きたか
ハウステンボスは、園内の庭園「アートガーデン」に屋外ジェットコースターを2027年に開業する計画を明らかにしました。投資規模は同社の開業以来最大。2026年4月に開業したエヴァンゲリオンをテーマにしたアトラクションは、開業後1カ月間のパーク全体の来場者数が前年同期比3割増と好調です。
顧客は誰で、何に困っているか
ハウステンボスの顧客は、九州域内の家族連れやカップル、そして全国・海外からの観光客です。ヨーロッパの街並みという美しい景観は同パークの原点ですが、「景観」には構造的な弱点があります。一度見れば満足してしまい、再訪の理由になりにくいのです。顧客の側の潜在的な困りごとは、「遠くまで行く決め手に欠ける」こと。交通費と時間をかけて向かうだけの、「そこでしかできない何か」を顧客は探しています。
付加価値の構造──「見る場所」から「体験する場所」へ
同社の戦略は明快です。2025年のミッフィーエリア、2026年4月のエヴァンゲリオン・アトラクション、そして2027年の大型コースター。社長は「体験したいコンテンツが4〜5くらいそろうと、テーマパークとして総合感が出る」と語っています。
- 一度見れば満足しやすい
- 来場動機が季節イベント頼み
- 目的が増えるたびに再訪する
- 来場動機をアトラクションで自ら作る
エヴァのアトラクション開業後1カ月でパーク全体の来場者が3割増えたという事実は、体験コンテンツが単体の集客に留まらず、パーク全体への来場理由になることを示しています。機能としてはアトラクションの追加ですが、顧客に起きているのは「行く理由が生まれた」という変化です。景観は受動的に眺めるものですが、体験は能動的に「しに行く」もの。目的性の強い来場動機は、距離と価格のハードルを越えさせます。
値決めへの接続
過去最大の投資は、当然どこかで回収されなければなりません。この構造での回収は、来場者数の増加に加えて、滞在時間の延長による園内消費、そして宿泊を伴う遠方客の増加という複数の経路で行われると考えられます。体験目当ての来場者は日帰りの近隣客よりも一人当たりの支出が大きくなりやすく、「体験の総合感」が高まるほど、入場料そのものの価格改定余地も広がります。投資→体験→来場理由→客単価という循環を、IPの力を借りながら意図的に回している点が、この成長戦略の核心です。
今日の問い
あなたの会社の商品やサービスは、顧客にとって「見るもの」でしょうか、それとも「体験するもの」でしょうか。顧客がわざわざ時間とお金をかけて御社を選ぶ「そこでしかできない何か」を、いくつ挙げられるでしょうか。それが4つ、5つとそろった時、価格の景色は変わるかもしれません。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。



