世界のニュースを、付加価値のレンズで読み解く ─ 株式会社カクシン

ツルハ、なぜPB拡大で客単価が上がるのか

小売・流通小売プライベートブランド客単価

ツルハホールディングスの2026年2月期は売上高1兆4505億円。既存店売上は3.3%増、客単価は2.9%増と伸び、PB売上構成比は10.1%へ拡大しました。安いから選ばれるのではなく、自社にしかない品質で選ばれる構造が、単価と粗利を同時に押し上げています。

現状

値下げと特売でしか客足をつなげず、単価が上がらない

理想

自社ならではの品質で選ばれ、単価と粗利が同時に伸びている

何が起きたか

ツルハホールディングスの2026年2月期決算によれば、売上高は1兆4505億円、既存店売上高は前期比3.3%増、客単価は2.9%増となりました。プライベートブランド(PB)売上高は前期比118.4%と2桁伸長を続け、PB物販売上高の構成比は10.1%に拡大。食品の単価上昇とPB商品の好調により粗利率も改善しています。

ツルハHD 主要指標の前期比(%)
3.3 既存店売上 2.9 客単価 10.1 PB売上構成比
出典: ツルハHD決算資料・流通ニュース

顧客は誰で、何に困っていたか

ドラッグストアの顧客は、医薬品と日用品を買いに来ていた人から、いまや食品まで一度に済ませたい生活者へ広がっています。物価高で節約志向が強まるなか、その困りごとは「とにかく安く」だけではありません。本質は「限られた予算で、質を落とさずに買い物を完結させたい」という願いです。安さだけを求めるなら、価格は他店と比較され続けます。生活者が本当に払いたいのは、「ここに来れば必要なものが、納得できる質と価格で揃う」という安心に対してです。

付加価値の構造──安さではなく「独自の質」で比較を外す

PBというと「安いから利益率が高い」と語られがちですが、ツルハの数字が示すのは別の構造です。客単価が2.9%上がりながらPBが伸び、粗利率まで改善している。つまりPBが単なる安売り商材ではなく、自社にしかない価値として機能しています。

機能は、自社で企画・調達したPB商品群。便益は、ナショナルブランドに引けを取らない品質を、この店でしか買えない形で手に入れられること。そして価値は、「価格で他店と比べるまでもなく、ここで買えば間違いない」という信頼です。PBは値札の数字を下げる道具ではなく、比較の土俵そのものを自社の商品棚に移す装置なのです。

よくある小売
  • 特売で客数を集める
  • 値下げで粗利が削られる
  • 価格でNBと比較される
ツルハが進む道
  • 品質で指名される
  • PBで粗利が改善する
  • 独自商品で比較を外す

同じ全国メーカー品を並べるだけなら、隣の店との違いは価格しかありません。独自商品の比率を上げることで、ツルハは価格競争の外に自分の売り場を作っていると考えられます。

値決めへの接続

多くの小売業が、特売と値下げで客数を維持しながら粗利を削る循環に苦しんでいます。ツルハの構造はこれと逆向きです。PB比率を高めるほど、価格で比較されない商品の割合が増え、値下げに頼らずとも客単価が上がる。値決めの主導権が、メーカーの希望小売価格や競合の特売チラシから、自社の商品設計へと移っていきます。安さで集客する回収モデルではなく、独自の質で選ばれることで単価と粗利を同時に回収するモデルへの移行が、増収と粗利改善という形で表れています。

今日の問い

あなたの会社の商品は、価格で比較される棚に並んでいるでしょうか、それとも「ここでしか買えない」棚に並んでいるでしょうか。他社と同じものを売る限り、勝負は価格でしか決まりません。自社にしか作れない価値をどれだけ品揃えに織り込めるか──それが、値下げ競争から抜け出す最初の一歩になります。

本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。

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