世界のニュースを、付加価値のレンズで読み解く ─ 株式会社カクシン

スシロー、海外で日本より高く売れる理由

外食・サービス外食回転寿司海外展開値決め

スシローを展開するFOOD & LIFE COMPANIESの2026年9月期中間期は売上収益24.7%増、営業利益43.7%増。海外事業の急伸が示すのは「市場ごとに価値から値決めする」発想です。

現状

海外価格を国内価格の延長で決め、為替とコストで調整している

理想

現地の顧客が感じる価値に合わせ、市場ごとに値決めされている

何が起きたか

スシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIESは2026年5月8日、2026年9月期中間期決算を発表しました。売上収益は前年同期比24.7%増の2541億円、営業利益は43.7%増の280億円。とりわけ海外スシロー事業は売上収益が60.0%増、セグメント利益は約2倍と急伸しています。日本経済新聞は以前より、海外店舗の商品単価が日本より高く設定されていると報じてきました。

FOOD & LIFE COMPANIES 2026年9月期中間期(前年同期比)(%)
24.7 売上収益 43.7 営業利益
出典: F&LC決算短信(2026年5月8日)

顧客は誰で、何に困っていたか

国内のスシローの顧客にとって、回転寿司は「手頃で確実な外食」です。一方、アジアの都市部の顧客にとって、日本品質の寿司を家族で楽しめる店は日常の選択肢ではなく、「特別感のある日本食体験」です。彼らの困りごとは安く寿司を食べられないことではなく、本物らしさと安心を備えた日本食体験が身近に少ないこと。同じ商品でも、市場が変われば解決している困りごとが変わる──ここが出発点です。

付加価値の構造──同じ皿が、違う価値になる

機能はどの市場でもほぼ共通です。鮮度管理された寿司、注文システム、店舗オペレーション。しかし便益と価値は市場ごとに別物です。日本では「今日のごはんを手頃に済ませつつ満足できる」こと。海外では「日本と同じ品質の寿司体験に、現地でアクセスできる」ことです。

コスト起点の輸出価格
  • 国内価格に輸送費や関税を上乗せ
  • 安さが強みのまま海外でも戦う
価値起点の現地価格
  • 現地での希少性と体験から逆算
  • 同じ商品がプレミアムとして扱われる

日本発の均一低価格は国内では武器ですが、それをそのまま輸出する必然性はありません。現地の顧客が感じる希少性と体験の質から価格を逆算すれば、同じ皿がプレミアムとして受け入れられる。海外セグメントの利益が売上を上回るペースで伸びているのは、価値の再定義と値決めがかみ合っている証拠と考えられます。国内で磨いた品質とオペレーションという「原資」を、海外では高い価格で回収する構造です。

値決めへの接続

この事例の要点は、価格をコストから積み上げるのではなく、市場ごとの価値から引き直していることです。国内価格は「自社の努力の結晶」ですが、それは特定市場の競争環境で最適化された答えにすぎません。市場が変われば正解の価格も変わる。海外展開を「同じものを同じ感覚で売る」拡大と捉えるか、「同じものの価値が変わる」機会と捉えるかで、回収できる利益は大きく変わります。F&LCは後者を選び、その成果が中間期の営業利益43.7%増に表れています。

今日の問い

あなたの会社の価格は、顧客セグメントや地域ごとに「感じられている価値」から検証されているでしょうか。国内の常識価格を、価値の異なる市場にまで持ち込んでいないか。同じ商品が最も高く評価される場所はどこか、一度地図を広げて考えてみてください。

本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。

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