サイゼリヤはなぜ値上げせず最高益なのか
サイゼリヤの2026年8月期は3年連続の最高益見通し。値上げ疲れが広がるなか、あえて価格を据え置き、国内既存店の客数を前年比14.3%増やしました。値上げが正解に見える局面での「据え置き」という値決めを、置換価値の視点で読み解きます。
原価高をそのまま値上げに乗せ、客数が細っている
商品を作り替えて価格を守り、客数で売上を伸ばす
何が起きたか
サイゼリヤの2026年8月期は、連結純利益が前期比11%増の124億円、売上高は8%増の2763億円、営業利益は23%増の190億円と、3年連続の最高益となる見通しです。特筆すべきは、この好業績が値上げによるものではない点です。第2四半期の国内既存店は客数が前年比14.3%増、客単価は842円から862円への微増にとどまり、伸びの主役は単価ではなく客数でした。
顧客は誰で、何に困っていたか
サイゼリヤの顧客は、外食に「特別」ではなく「日常の安心」を求める生活者です。物価高と度重なる値上げのなかで、その困りごとは切実になっています。本質は「値上げのたびに、行ける店が一つずつ減っていく」という不安です。多くの外食チェーンが原価高を価格に乗せるほど、顧客は「今日は外食を控えよう」と財布を閉じます。生活者が本当に払いたいのは、「いつ行っても、この質がこの値段で待っている」という予測可能な安心に対してです。
付加価値の構造──据え置きこそが提供価値になる
サイゼリヤの松谷秀治社長は「原価高騰による単純な値上げはしない。新しい提案商品を作ることで価格設定を見直す施策は取り得る」と語っています。ここにあるのは、値段を上げないことそのものを価値に変える発想です。
カクシンは価値を「置換価値・リスク軽減価値・感動価値」に分けて捉えます。サイゼリヤが磨いているのは、この「置換価値」です。同じ満足を、より安く、より確実に提供する力。原価が上がる局面でそれを実現できるのは、値段を我慢しているからではなく、垂直統合と徹底した生産性改善で原価そのものを作り替えているからです。
据え置きは、企業努力の裏づけがあって初めて価値になります。何もせずに価格だけ維持すれば利益が痩せますが、原価構造を作り変えたうえでの据え置きは、顧客に「この質でこの値段」という驚きに近い納得を与え、客数となって返ってきます。
- 原価高を値上げで転嫁する
- 値上げで客数が細る
- 単価で売上をつくる
- 商品を作り替えて価格を守る
- 据え置きで客数が増える
- 客数で売上をつくる
値決めへの接続
値上げと据え置きは、どちらが正しいという話ではありません。問われているのは、その値決めが何によって支えられているかです。値上げは価値の裏づけがあって初めて客数を守れます。据え置きもまた、原価を作り替える力があって初めて利益を伴います。サイゼリヤは後者を選び、単価をほぼ動かさずに客数を14.3%増やすことで、値上げに頼らない回収モデルを成立させました。価格を動かすかどうかではなく、価格を動かす/動かさないだけの実力を自社が持っているか──そこに値決めの本質があります。
今日の問い
あなたの会社は、値上げと据え置きのどちらも「選べる」状態にあるでしょうか。値上げしか手がないなら、それは価格の主導権を原価に握られている状態かもしれません。原価を作り替える力があれば、据え置きすら戦略的な一手になります。あなたの会社の値決めは、実力に裏づけられた選択でしょうか、それとも選択肢のない我慢でしょうか。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。

