
ネスレ、値上げの次は数量で成長する理由
2026年第1四半期はオーガニック成長3.5%と市場予想を上回り、数量も1.2%増。大幅値上げを一巡させたネスレは「価格と数量の両輪」へ移行。値上げ後の経営の教科書です。
コスト転嫁の値上げが続き、数量の減少と隣り合わせになっている
値上げ浸透後は価格を安定させ、数量と価格の両輪で成長している
何が起きたか
ネスレは2026年4月23日、第1四半期のオーガニック成長率が3.5%と、市場予想の2.4%を上回ったと発表しました。内訳は価格が2.3%、数量・構成(RIG)が1.2%。コーヒー事業は約9%成長と全体を牽引しました。同社は、前年に大幅な値上げを実施したコーヒーとカカオについて「同じ水準の値上げは行わない」方針を示しています。
顧客は誰で、何に困っているか
顧客は、世界中でコーヒーや食品を毎日買い続ける生活者です。コーヒー豆やカカオの国際価格が歴史的な高騰を続けるなか、生活者の困りごとは「毎日の習慣を、家計を壊さずに続けたい」こと。値上げそのものよりも、値上げが際限なく続くのではないかという不安が、ブランドからの離反を招きます。ネスカフェやキットカットのような日常ブランドにとって、価格の「予見可能性」は品質と同じくらい重要な価値です。
付加価値の構造──値上げには「終わり」の設計がいる
今回の決算が示すのは、値上げ経営には段階があるという事実です。第1段階は、コスト高騰を価格に転嫁して利益の毀損を止める緊急対応。第2段階は、価格を安定させて数量を取り戻す局面。そして第3段階が、価格と数量の両輪による持続成長です。
ネスレの数量(RIG)1.2%増は、値上げを経てもブランドが選ばれ続けていることの証明です。値上げした商品の数量が戻るのは、機能(安定した品質の日常食品)が、便益(いつもの味をいつもの店で買える)を経て、「この価格でもこのブランドがいい」という価値の承認に達したことを意味します。逆に言えば、数量が戻らない値上げは、顧客がまだ価値を認めていないというシグナルです。
値決めへの接続
「もう同じ水準では値上げしない」という宣言は、一見すると弱気に映ります。しかしこれは、価格をこれ以上の回収手段にせず、数量とミックス(高付加価値品への構成シフト)で稼ぐという、値決めの局面転換の宣言です。値上げで確保した利益率の土台の上で、今度は顧客数を増やす。値上げと数量成長は対立概念ではなく、順番の問題である──この規律が市場予想を上回る成長につながったと考えられます。
今日の問い
あなたの会社の値上げには、「終わり」と「次」の設計があるでしょうか。転嫁が一巡した後、何で成長するのか。数量は戻っているのか。値上げ後の数量推移こそ、顧客が価値を認めたかどうかの通信簿です。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。



