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界 草津、9万円超でも開業月ほぼ満室の理由

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星野リゾートの温泉旅館「界 草津」が6月7日開業。1泊2食付き2人1室9万2,000円からの価格帯ながら、開業月の6月は全94室がほぼ満室。「賑わい」と「静謐」を両立させる体験設計が価格を支えています。

現状

立地や設備の条件を前提に、相場に合わせた宿泊価格をつけている

理想

滞在体験の設計そのものが、相場より高い価格の根拠になっている

何が起きたか

星野リゾートは2026年6月7日、群馬県・草津温泉に温泉旅館ブランド「界」として県内初となる「界 草津」を開業しました。1泊2食付き2人1室9万2,000円からの価格帯ながら、開業月の6月は全94室がほぼ満室。客室数はブランド最大規模で、長さ80メートルの宿泊者専用トンネルで温泉街とつながります。

顧客は誰で、何に困っているか

顧客は、日常を離れて上質な温泉滞在を求める大人の旅行者です。草津は日本有数の人気温泉地ですが、その人気ゆえのジレンマがあります。湯畑周辺の賑わいは草津の魅力そのものである一方、宿にまで喧騒が及べば「静かに休む」という温泉旅行の本質が損なわれる。逆に街から離れた静かな宿を選べば、温泉街の散策やグルメという楽しみへのアクセスが悪くなる。「賑わいも静けさも両方ほしい」──これが草津を訪れる顧客の、声にならない困りごとでした。

付加価値の構造──トンネルが解いた二律背反

界 草津の設計は、この二律背反への直接の回答です。宿自体は湯畑から徒歩15分ほど離れた草津白根山の麓、11万平方メートル超の敷地に立地し、静謐な環境を確保。その上で、長さ80メートルの宿泊者専用トンネルが温泉街側の西の河原公園横へと接続し、賑わいへのアクセスを保証します。大浴場には性質の異なる2種類の源泉を引き入れ、湯めぐりの楽しみも敷地内で完結できます。

機能
温泉街直結の専用トンネルと2種の源泉
便益
賑わいと静けさを自由に行き来できる
価値
草津の魅力を丸ごと味わい尽くす滞在

機能だけを見れば「離れた立地」と「トンネル」です。しかし顧客に起きるのは、「静かな宿にいながら、思い立ったら温泉街へ出られる」という行動の自由。そしてその先にあるのは、草津という土地の魅力を賑わいと静けさの両面から味わい尽くす滞在体験です。立地の不利を設備で補ったのではなく、立地の選択とトンネルをセットで設計することで、従来はどちらの宿を選んでも得られなかった価値を新たに作り出しています。

この事例の感動価値

1泊2食付き2人1室9万2,000円からの価格帯で、開業月の6月は全94室がほぼ満室。「賑わいも静けさも両方ほしい」という声にならない願いに応えた設計が、開業前から支持されました。

値決めへの接続

2人1室9万2,000円からという価格は、温泉旅館として明確に高価格帯です。それでも開業月がほぼ満室で立ち上がったという事実は、この体験設計への支払い意思が価格を上回っていたことを示します。注目すべきは、この価格の根拠が「客室の豪華さ」だけではなく「滞在体験の構造」に置かれている点です。相場から出発すれば、この立地・この規模の宿の価格は別の水準に落ち着いたはずです。顧客の困りごとから出発し、その解決の価値から価格を導く。94室という規模でそれを成立させたことに、値決めの意思を感じます。

今日の問い

あなたの会社の価格は、業界の相場から導かれていますか。それとも、顧客の「あちらを立てればこちらが立たず」という諦めを解消した価値から導かれていますか。顧客が仕方なく受け入れている二律背反を一つ見つけ、それを解いた時、価格は相場を離れる根拠を持ちます。

本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。

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