
ユニクロ、上期最高益を生む「定番」の価値
ファーストリテイリングの上期は営業利益31.7%増で過去最高。牽引したのは値引きに頼らない定番「LifeWear」の海外展開です。流行を追わない服が、なぜ世界で選ばれ続けるのかを分解します。
定番商品ほど競合と比較され、季節ごとの値引きが常態化している
素材と機能の独自価値が、世界のどの市場でも定価で選ばれている
何が起きたか
ファーストリテイリングは2026年4月9日、2026年8月期上期(2025年9月〜2026年2月)の決算を発表しました。売上収益は2兆552億円(前年同期比14.8%増)、営業利益は4006億円(31.7%増)で、上期として過去最高を更新。通期予想も売上収益3兆9000億円、営業利益7000億円へ上方修正しました。
顧客は誰で、何に困っているか
ユニクロの顧客は、もはや日本の生活者だけではありません。上期の海外ユニクロ事業は売上収益1兆2413億円(22.4%増)と、国内(5817億円)の2倍を超える規模に育っています。世界の顧客に共通する困りごとは何か。それは「流行に振り回されず、品質のいい服を手頃な価格で、迷わず買いたい」というニーズです。ファッションを楽しみたい人ばかりではありません。多くの生活者にとって服選びは、時間を奪われ、失敗のリスクを伴う作業です。この「選ぶ負担」こそが、ユニクロが応えている潜在ニーズだと考えられます。
付加価値の構造──流行を追わないことが価値になる
ユニクロの服は「LifeWear」と定義された定番です。ヒートテックやエアリズムに代表される機能素材を軸に、同じ商品を世界中で、シーズンをまたいで売り続けます。
構造を分解しましょう。機能は、高機能素材の定番服を世界同一基準で提供すること。便益は、いつ・どこで・誰が買っても失敗がないこと。そして価値は、「服選びの手間と失敗のリスク」からの解放です。
この構造は値決めにも効きます。トレンド追随型のアパレルは、シーズン末の値引き処分が宿命です。しかし定番は売り切る期限が緩く、値引きへの依存が構造的に小さい。さらに同一商品を全世界で売るため、素材調達と生産の規模の経済が働きます。上期の海外ユニクロ事業の利益率が約19%に達しているのは、この「定番×グローバル規模」の掛け算の結果と考えられます。
値決めへの接続
ユニクロの価格帯は決して高級ではありません。しかし注目すべきは、「品質対比の割安感」を保ったまま、値引きに頼らず定価で売り切り、シェア拡大で価値を回収している点です。特に海外市場では、ユニクロは日本国内よりも相対的に高い価格ポジションで受け入れられています。同じ商品でも、市場ごとの価値の感じられ方に合わせて値決めを変える──これはグローバル展開を考える企業にとって重要な示唆です。安いから売れているのではなく、価格を上回る価値が明確だから売れている。営業利益31.7%増という数字は、その差分の大きさを物語っています。
今日の問い
あなたの会社の「定番商品」は、値引きの対象になっていないでしょうか。流行や競合に合わせて商品を変え続けるのではなく、顧客の変わらない困りごとに応え続けることで、値引きに頼らない構造は作れます。自社の商品が解放している「顧客の手間とリスク」は何か。そこから値決めを見直してみてください。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。