世界のニュースを、付加価値のレンズで読み解く ─ 株式会社カクシン

ディスコ、なぜ利益率42%を6期続けられるか

製造業・B2B半導体値決め置換価値

ディスコの2026年3月期は売上高4,368億円、営業利益1,849億円で6期連続の最高益。営業利益率は42%超と、上場製造業でも異例の高さです。半導体の後工程で使う精密加工装置の世界シェア過半を握る同社の値決めを、置換価値の視点で読み解きます。

現状

自社の装置や部品が相見積もりにかけられ、単価で値切られている

理想

代替できない加工能力が、価格の主導権として認められている

何が起きたか

ディスコの2026年3月期は、売上高が前期比11.1%増の4,368億円、営業利益が10.9%増の1,849億円となり、6期連続で過去最高を更新しました。営業利益率は42%を超えます。上場する製造業のなかで、これほどの利益率を安定して出せる会社はごくわずかです。7月21日には「2026年4〜6月期の営業利益が前年同期比で約4割増となったもよう」との報道もあり、23日には第1四半期決算を控えています。牽引役は、AI向け半導体の製造装置と消耗品の想定を超える需要です。

ディスコ 通期営業利益の推移(億円)
1,104 23/3期 1,215 24/3期 1,668 25/3期 1,850 26/3期
出典: ディスコ通期決算(IR BANK集計)

営業利益そのものが、4期で1,104億円から1,849億円へと伸びています。売上が増えるほど利益率が下がる(=値引きで数量を取る)のではなく、規模が大きくなるほど利益率がむしろ上がっている点に、この会社の値決めの本質が表れています。

顧客は誰で、何に困っていたか

ディスコの顧客は、半導体をつくるメーカーや、その受託製造を担う工場です。彼らの困りごとは「装置が安いかどうか」ではありません。生成AI向けの先端半導体は、回路がますます微細になり、チップも薄く積み重ねる方向へ進んでいます。そこで問われるのが、ウエハをいかに傷めず、狙った寸法どおりに「切る・削る・磨く」かという後工程の精度です。ここで少しでも欠けや歪みが出れば、高価なチップが不良品になる。装置の価格差より、歩留まりを守れるかどうかのほうが、顧客にとってはるかに切実なのです。

付加価値の構造──希少な加工能力が価格の主導権を生む

ディスコが握っているのは、ウエハを個々のチップに切り分けるダイシング装置や、薄く削るグラインダなど、後工程の精密加工で世界シェアの過半を占める技術です。ここにあるのは、カクシンが価値を分類する際の「置換価値」の典型です。同じ加工を他社では同じ品質で置き換えられない──だから顧客は「ここに任せるしかない」と考えます。

機能
半導体ウエハを傷めず極薄・極微に切り分け、削り、磨く
便益
顧客が歩留まりよくAI向け先端半導体を量産できる
価値
「この工程はディスコでしか任せられない」から価格を受け入れる

しかも装置は売って終わりではありません。切削に使うブレードなどの消耗品が、稼働するほど継続的に売れていきます。装置で顧客の生産ラインに入り込み、消耗品で使い続けてもらう。この二段構えが、好況期に利益率をさらに押し上げる構造をつくっています。

よくあるB2B装置の売り方
  • 仕様表と価格で比較される
  • 値下げ要求が利益を削る
  • 好況でも薄利のまま
ディスコの売り方
  • 「これでしか削れない」で選ばれる
  • 希少な加工精度が価格を支える
  • 好況で利益率がさらに上がる

値決めへの接続

多くのB2B装置ビジネスは、仕様表と価格を並べて比較され、最後は値下げ競争に落ちていきます。ディスコが違うのは、価格の根拠を「他社より少し高性能」ではなく「この工程はここでしか任せられない」という希少性に置いている点です。だからこそ、需要が伸びるほど値引きで数量を追う必要がなく、42%という利益率を守りながら規模を伸ばせる。値上げや高値維持が利益を痩せさせるのではなく、最高水準の利益率を支える側に回っている。これが、価値に基づく値決めの到達点です。

今日の問い

あなたの会社の装置や部品は、顧客にとって「安いから選ぶもの」でしょうか、それとも「これでないと困るもの」でしょうか。相見積もりで単価を叩かれる立場から抜け出せるかどうかは、値引き交渉の巧拙ではなく、「他では置き換えられない」と言わせるだけの能力を、どの工程で積み上げてきたかで決まります。あなたの会社の値段は、仕様と価格が決めていますか。それとも、代えのきかない加工能力が決めていますか。

本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。

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