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KOA、増収でも実質減益になる構造

製造業・B2B電子部品価格転嫁値決め原材料高用途別

KOAの2026年4〜6月期は売上高208.8億円と40.3億円の増収、営業利益も70.2%増。ただし為替を除いた実質では営業利益は2.2億円の減益でした。受注が旺盛でも利益が薄くなる構造を、値決めの視点で読み解きます。

現状

数量と為替で増収しても、原材料高が利益を削っている

理想

用途ごとの価値を言葉にし、価格の根拠として示せている

何が起きたか

電子部品メーカーのKOAが2026年7月23日に公表した2027年3月期第1四半期(4〜6月)の実績は、売上高208.8億円で前年同期比40.3億円の増収(23.9%増)、営業利益8.5億円で同70.2%増でした。通期予想も4月24日公表分から上方修正し、売上高873.0億円(前期比20.8%増)、営業利益53.6億円(同47.0%増)としています。

数字だけを見れば好調です。ただし同社の決算補足資料は、その中身をきわめて率直に開示しています。増収40.3億円のうち為替の影響を除いた実質の増加は27.1億円。そして営業利益は、為替を除くと2.2億円の減益。貴金属相場の高騰を受け、限界利益の増加は1.4億円にとどまり、販管費は6.4億円増えました。実績為替レートは1米ドル160.72円で、前年同期の143.71円から17円円安に振れています。

KOAの用途別売上高 前年同期比(2026年4〜6月期)(%)
7.5 自動車 38.1 産業機器 77 通信 57.9 電源 16.4 家電
出典: KOA 2027年3月期第1四半期決算補足資料

顧客は誰で、何に困っていたか

KOAの顧客は、装置や機器を設計・製造するメーカーです。用途別の伸びを見ると、需要の中身が動いていることがわかります。産業機器向けが前年同期比38.1%増、通信向けが77.0%増、電源向けが57.9%増。一方で自動車向けは7.5%増にとどまり、売上構成比は46%まで下がりました。日本とアジアの産業機器、アジアのAI関連機器、欧米のディストリビューター向けが伸びを牽引しています。

抵抗器は1個あたり数円から数十円の部品です。顧客の困りごとは、その単価ではありません。装置が止まれば、止まるのは部品ではなくラインや通信網であり、AIサーバーであれば計算そのものです。発熱の許容範囲、電流の耐性、寿命、規格認証、そして必要な数量が必要な時期に確実に届くこと──潜在ニーズは「安く買うこと」ではなく「装置全体の信頼性を部品の段階で確定させること」にあります。

付加価値の構造──需要は動いたが、値決めは追いついているか

機能
抵抗器・ヒューズなどをAI関連機器や産業機器の要求仕様に合わせて設計・供給する
便益
顧客は装置の信頼性と安全性を部品の段階で確保でき、設計と調達の手戻りが減る
価値
「同等品なら安いほうを」ではなく「この用途はこの部品で」と指名される理由になる

KOAの製品は、この「装置の確実性」を担う位置にあります。だからこそAI関連機器や産業機器という、止められない用途で受注が伸びました。抵抗器は自動車向け以外のすべての用途で好調に推移し、ヒューズなどの「安全」領域も産業機器・電源向けで24.2%増えています。顧客が求めているのが単価の安さではないことは、この伸び方そのものが示しています。

ところが利益の分解結果は、別のことを語ります。増収の1/3程度は為替、つまり自社の付加価値ではない要因です。生産量が増えたことによる操業度の改善はあったものの、貴金属相場の高騰分がそれを削り、実質では営業減益。四半期純利益は16.3億円と大きく伸びていますが、これは連結子会社の解散・清算決議に伴う法人税等調整額7.5億円の計上を含んだ数字です。

よくある値決め
  • 相場と数量の増減で売上をつくる
  • 原材料の高騰を交渉のたびに一から説明する
  • 交渉が単価の綱引きになる
価値からの値決め
  • 用途ごとの要求水準を価格の根拠にする
  • 上昇分をどう反映するかを事前に合意しておく
  • なぜその部品でなければならないかを語る

ここにあるのは、B2B部品メーカーが共通して直面する構造です。顧客は「信頼性」に価値を認めて指名してくれる。にもかかわらず、価格は原材料相場と数量の関数のまま置かれている。価値を認められている理由(用途ごとの要求水準を満たす設計力)と、価格が決まる理由(相場と量)が、別々の場所にあるのです。受注が増えるほど原材料の使用量も増えるため、この状態では好況そのものが利益を薄める方向にも働きます。

値決めへの接続

打ち手は、値上げの是非という一点ではありません。増収の中身を「為替・数量・価格」に分解し、価格で取れている分がどれだけあるかを直視することが出発点になります。為替は明日反転しうる外部要因であり、数量は顧客の設備投資サイクルに従います。自社が残せるのは、価格に織り込んだ価値の分だけです。

具体的には2つの接続点があります。1つは、原材料の上昇分をどう反映するかを平時に合意しておくこと。相場が動いてから交渉を始めると、議題は必ず単価の綱引きになります。もう1つは、用途ごとに値決めを分けることです。自動車向けと、止められないAI関連機器向けで、顧客が失うリスクの大きさは同じではありません。同じ抵抗器でも、担っている責任の重さが違えば、価格の根拠も変わってよいはずです。回収の形は、いま進んでいる数量拡大に、用途ごとの単価という軸を重ねられるかにかかっています。

今日の問い

あなたの会社の直近の増収は、何によってもたらされたものでしょうか。為替か、数量か、それとも価格か。分解してみると、「忙しくなったのに利益が増えない」という感覚の正体が見えてきます。そして顧客があなたを選んでいる理由は、価格表のどの行に書かれているでしょうか。

本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。

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