
コストコ、低価格の約束に会費を払う顧客の構造
2026年度第3四半期、会員費収入は10.7%増の13.7億ドル、米加の更新率は92.2%。商品ではなく「いつでも最安級」という約束そのものに値段がつく、逆転の値決めを読み解きます。
商品の粗利で稼ぐため、低価格と利益が綱引きになっている
顧客への約束そのものに値段がつき、毎年更新され続けている
何が起きたか
コストコが2026年5月28日に発表した2026年度第3四半期決算(2026年5月10日締め)で、会員費収入は前年比10.7%増の13.7億ドルとなりました。有料会員数は8,290万人(4.1%増)、上位区分のエグゼクティブ会員は4,120万人(9.6%増)。米国・カナダの会員更新率は92.2%と極めて高い水準を維持しています。
顧客は誰で、何に困っているか
顧客は、物価上昇のなかで家計を守りたい家庭と、仕入れコストを抑えたい小規模事業者です。彼らの困りごとは、単に「安く買いたい」ことではありません。「どの店が本当に安いのか、いちいち比べる時間も確信もない」ことです。特売やポイントで実質価格が見えにくい小売業界では、賢く買うこと自体が労働になっています。コストコの会員証は、この比較労働からの解放──「ここで買えば大きくは間違えない」という保証に対する対価です。
付加価値の構造──商品で稼がず、約束で稼ぐ
一般の小売業は商品の粗利で稼ぐため、価格を下げれば利益が減るという綱引きから逃れられません。コストコは構造が逆です。商品の値入れを低く抑える規律を守り、利益の柱を会員費に置く。低価格は利益の敵ではなく、会員費という収益の源泉を守るための商品なのです。
機能は年会費と引き換えの会員制卸売。便益は、いつ行っても最安級で買えるという保証。価値は、比較して回る手間と「損をしていないか」という不安からの解放です。エグゼクティブ会員が9.6%増と全体を上回る伸びを示したことは、顧客がこの約束により多く払う意思を持っていることを示しています。
値決めへの接続
注目すべきは、値決めの主戦場が商品価格ではなく会費に置かれている点です。商品を値上げすれば顧客との約束が揺らぎますが、会費は「保証の対価」なので、保証の価値が伝わっている限り改定が受け入れられます。実際、今期の会員費収入の伸びの一部は2024年の米加での会費改定によるものであり、その後も更新率は92.2%と高止まりしています。値上げしても解約されない──これは、顧客が価格ではなく価値との交換で会費を捉えている証拠と考えられます。
今日の問い
あなたの会社が顧客としている約束は何でしょうか。そしてその約束は、商品とは別の値札を貼れるほど明確でしょうか。「何を売るか」の前に「何を保証するか」を定義できたとき、値決めの選択肢は大きく広がります。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。


