
カプコン、旧作が値崩れせず売れ続ける構造
カプコンの2026年3月期は売上高1,953億円、販売本数5,907万本といずれも過去最高。新作「バイオハザード レクイエム」691万本に加え、旧作のリピート販売が柱です。時間が経っても値崩れしない値決めの構造を解説します。
発売から時間が経った商品は、値引きして売り切るものとされている
過去の商品が資産として値崩れせず、長期にわたり利益を生んでいる
何が起きたか
カプコンが2026年5月13日に発表した2026年3月期決算は、売上高1,953億円(前年比15.2%増)、営業利益752億円(同14.5%増)、純利益545億円(同12.7%増)で、連結売上高・営業利益とも過去最高を更新。コンシューマゲームの販売本数は前年比710万本増の5,907万本と過去最多で、新作「バイオハザード レクイエム」は691万本を売り上げました。
顧客は誰で、何に困っているか
顧客は世界中のゲームファンです。彼らの困りごとは「遊ぶものがない」ことではありません。むしろ選択肢は無限にあり、「限られた時間とお金を、外れのない体験に使いたい」ことこそが本質的なニーズです。数千円と数十時間を投じるゲームで失敗したくない。だからこそ、シリーズの歴史と評価が積み上がったタイトルには、「面白さが保証されている」という強力な価値が宿ります。新作を待つファンにとっても、過去の名作は「次を最高の状態で迎えるための予習」という意味を持ちます。
付加価値の構造──過去作を「在庫」ではなく「資産」にする
カプコンの業績の柱は、新作の爆発力だけではありません。5,907万本という販売本数の相当部分を、発売から時間の経った旧作のリピート販売が占めています。「モンスターハンター」「ストリートファイター」「バイオハザード」といったシリーズの過去作が、デジタル配信を通じて世界中で売れ続けているのです。
物理的なパッケージが主流だった時代、旧作は店頭の棚を空けるために値引きされる「在庫」でした。デジタル配信には棚の制約がなく、保管コストもかからない。すると旧作は、追加の製造原価ほぼゼロで売上を生み続ける「資産」に変わります。ここで重要なのは、資産価値を支えているのがシリーズの品質への信頼だという点です。「カプコンのタイトルなら外れない」という信頼こそが、発売から年数が経っても顧客が定価に近い対価を払う理由になっています。
値決めへの接続
この構造の値決め上の要諦は、「安易に投げ売りしない」ことです。旧作の価格を極端に下げれば短期の本数は稼げますが、新作を定価で買う理由が消え、シリーズ全体の価格の基準線が崩れます。カプコンの13期連続の営業増益は、時間軸を長く取った価格規律の産物と考えられます。新作で価値の頂点を作り、旧作は信頼を担保に緩やかな価格で長く回収する。一本のヒットを一過性の売上で終わらせず、シリーズという時間の資産に変換する設計です。
今日の問い
あなたの会社では、発売から時間の経った商品をどう扱っているでしょうか。「古いから安く」が習慣になっていないでしょうか。品質への信頼が積み上がった商品は、本来もっとも値崩れしにくい資産のはずです。過去の商品群が今も利益を生む仕組みを、御社はいくつ持っていますか。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。


