
マクドナルド、値上げの春に4割増益の構造
日本マクドナルドHDの2026年1〜3月期は営業利益39.3%増。2月に約6割の商品を値上げしながら、既存店売上は42四半期連続増。守る価格と動かす価格を使い分ける値決めを読み解きます。
値上げは全品一律で行われ、価格の役割分担が設計されていない
守る価格と上げる価格を使い分け、値頃感と収益を両立している
何が起きたか
日本マクドナルドホールディングスは2026年5月12日、2026年12月期第1四半期決算を発表しました。売上高は前年同期比2.7%増の1039億円、営業利益は39.3%増の166億円、純利益は44.4%増の110億円。既存店売上高は2015年度から42四半期連続の増加です。この直前の2月25日には約6割の商品を10〜50円値上げし、ビッグマックは単品500円になりました。
顧客は誰で、何に困っていたか
顧客は、子ども連れの家族、学生、時間のないビジネスパーソンまで幅広い生活者です。物価上昇下の彼らの困りごとは「安いものが欲しい」という単純な話ではなく、「出費の見通しが立つ楽しみを失いたくない」ことです。ワンコインで収まる昼食、家族で行っても会計が読める外食。値上げそのものより、「行くたびに期待が裏切られる」ことが顧客を遠ざけます。だからこそ、何が変わり、何が変わらないかの設計が問われます。
付加価値の構造──価格に役割を与える
今回の値上げの構造を見ると、約6割の商品を上げる一方、ハンバーガーなど一部の定番は据え置き、「セット500」のような値頃感の入口も同時に用意されています。さらに「てりたま」「ドラクエバーガー」などの期間限定商品が話題と来店動機をつくり、「トクニナルド」といった販促がお得感を演出する。値上げ・据え置き・限定・販促がそれぞれ役割を持って同時に走っています。
- 全商品に同率で転嫁する
- 顧客は「全部高くなった」と感じる
- 上げる商品と守る商品を選ぶ
- 顧客は入口の値頃感を確認できる
機能として見れば同じハンバーガーの提供ですが、便益は「予算内で確実に楽しめる選択肢がいつもあること」、価値は「日常の中の失敗しない楽しみ」です。この価値を守る限り、個々の商品の値上げは体験全体への裏切りとして受け取られにくい。営業利益39.3%増と客足の維持が両立したのは、価格全体がひとつのポートフォリオとして設計されているためと考えられます。
値決めへの接続
学ぶべきは、値上げの成否が「率」ではなく「設計」で決まるという点です。全品一律の転嫁は計算としては簡単ですが、顧客には「全部高くなった」という一色の印象を残します。対して、上げる価格・守る価格・話題をつくる商品を分けると、顧客は自分なりの値頃感の確認ポイントを見つけられる。値上げとは単価表の更新ではなく、顧客との信頼を保ちながら収益構造を組み替える作業なのです。
今日の問い
あなたの会社の価格表に、役割分担はあるでしょうか。収益を担う商品、値頃感の入口を守る商品、話題と来店動機をつくる商品。次の価格改定を「一律何%」で考える前に、どの価格で信頼を守り、どの価格で利益を取るかを設計してみてください。
本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。


