日東電工、利益率30%を狙う半導体シフト
日東電工が新中期経営計画で半導体領域に630億円超を投資し、売上を2倍超の1000億円以上、営業利益率30%以上を目指すと発表。成熟事業から高付加価値領域へ資源を移す型を解説します。
既存事業の延長で投資が配分され、利益率の目標が市場平均に留まっている
利益率で投資先を選び、高付加価値領域へ計画的に資源を移せている
何が起きたか
日東電工は2026年5月、2029年3月期までの新しい中期経営計画を発表しました。半導体領域に、それまでの3年間の6倍超となる630億円以上を投資。2031年3月期までに半導体領域の売上高を2026年3月期比2倍超の1000億円以上に拡大し、営業利益率30%以上を目指します。全社では2029年3月期に営業利益2200億円(2026年3月期比20%増)、営業利益率20%を掲げ、米IBMと半導体の中間基板「インターポーザー」を共同開発する計画も明らかにしました。
顧客は誰で、何に困っているか
半導体領域の顧客は、先端半導体を製造するメーカーとその周辺産業です。半導体の性能向上は、回路の微細化に加えて、チップを積み重ねて接続する技術に軸足を移しています。工程が複雑になるほど、材料に求められる要件は厳しくなり、既存の材料では解けない課題が増えていく。顧客の困りごとは、「次の世代の量産技術を、一緒に成立させてくれる材料メーカーが限られていること」だと考えられます。IBMとの共同開発が象徴するように、顧客が求めているのは納入業者ではなく、開発段階から伴走するパートナーです。
付加価値の構造──利益率30%は「先に決める」もの
注目すべきは、営業利益率30%以上という数字が、結果予想ではなく目標として先に置かれている点です。全社目標の20%に対し、半導体領域には10ポイント高い水準を課している。これは「高い利益率が成立する領域を選んで投資する」という意思表示です。
- 既存事業の維持が中心
- 利益率は結果として決まる
- 単独で製品を開発する
- 半導体領域へ前3年比6倍超の630億円
- 営業利益率30%以上を先に目標に置く
- IBMと次世代基板を共同開発する
機能は高機能材料、便益は微細化・積層化に伴う工程課題の解決、価値は次世代半導体の量産を左右するパートナーであること。この価値変換が成立する領域では、材料の価格は原価からではなく、顧客の量産成功への貢献から決まります。だからこそ利益率30%を先に置けるのです。
値決めへの接続
多くの企業では、利益率は「頑張った結果」として事後的に決まります。日東電工の中計が示すのは逆の順序です。目標利益率を先に定め、それが成立する領域を選び、そこへ投資を集中する。利益率とは値決めの積み重ねですから、これは実質的に「この価格水準で売れる事業しかやらない」という宣言と考えられます。売上高1兆円企業が、成長の物差しを規模ではなく利益率に置き換えている──成熟事業を抱える製造業にとって、資源配分と値決めを一体で設計する手本と言えるでしょう。
前3年比6倍超という投資の傾斜も重要です。高利益率の領域は、往々にして技術開発と顧客との共同開発に先行投資を要します。利益率30%という目標は、値札を上げる宣言ではなく、その価格に値する価値を作り込むための投資計画とセットで初めて成立するのです。
今日の問い
あなたの会社の来期計画で、利益率は「結果」でしょうか、それとも「先に決めた目標」でしょうか。目標利益率を先に置くと、やるべき事業とやめるべき事業、通すべき価格と断るべき案件が見えてきます。あなたの会社が「利益率30%を先に宣言できる領域」はどこにありますか。



