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サイボウズ、2割値上げの後も増収が続く理由

IT・SaaSSaaS値上げ継続率

サイボウズの2026年12月期第1四半期は売上高102億円(前年同期比17.0%増)。2024年11月にクラウド月額を約2割値上げした後も成長が続いています。値上げに耐える「業務基盤」の価値を考えます。

現状

値上げをすれば顧客が離れるという前提で、価格改定が先送りされている

理想

顧客の業務に深く組み込まれた価値が、価格改定後も選ばれ続けている

何が起きたか

サイボウズは2026年5月14日、2026年12月期第1四半期決算を発表しました。売上高は102.4億円(前年同期比17.0%増)、営業利益は30.1億円(同15.3%増)。同社は2024年11月にkintoneなどクラウドサービスの月額を約2割値上げし、kintoneの最低契約ユーザー数も5から10に引き上げましたが、その後も2桁成長が続いています。

kintone スタンダードコース月額(1ユーザー)(円)
1,500 改定前 1,800 改定後
出典: サイボウズ発表(2024年11月改定)

顧客は誰で、何に困っているか

kintoneの顧客は、システム部門に頼らず自分たちの業務を改善したい現場の人たちです。日報、案件管理、問い合わせ対応──会社ごとに形の違う業務は、パッケージソフトにも表計算にも収まりきりません。彼らの困りごとは「専用システムを作る予算も時間もないが、表計算の限界も超えている」こと。kintoneは、プログラミングなしで現場が自ら業務アプリを作れるという形でこの隙間に応えてきました。

付加価値の構造──「使うツール」から「業務が載った基盤」へ

値上げ後も成長が続く理由は、顧客との関係の深さにあります。単なる便利ツールなら、2割の値上げは乗り換え検討の引き金になったはずです。

便利なツールとしての利用
  • 使うのは一部の部署だけ
  • 価格差があれば乗り換え候補に
  • 値上げは解約の引き金
業務基盤としての定着
  • 現場が自分で業務アプリを作る
  • 移行コストが価格差を上回る
  • 値上げ後も利用が続く

kintoneの上では、顧客自身が作った業務アプリが日々動いています。機能は業務アプリの作成基盤ですが、便益は「自社の業務プロセスそのものがそこに載っている」こと。つまり顧客にとっての価値は、ツールの利便性ではなく、積み上げてきた自社の業務資産です。この状態では、乗り換えは「ソフトの変更」ではなく「業務の作り直し」を意味します。移行コストが価格差をはるかに上回るため、値上げが選択を覆さないのです。契約で顧客を囲い込んだのではなく、顧客が自らの手で業務を載せ、根を張ったという順序が重要です。押しつけられた縛りは反発を生みますが、自分で築いた資産は手放したくないものだからです。

値決めへの接続

今回の価格改定は約11年ぶりと報じられています。長期にわたり価格を据え置いてサービスの価値を高め続け、業務基盤としての定着を確認してから改定に踏み切った──結果として、値上げは増収として実を結んでいます。学ぶべきは値上げの幅ではなく順序です。先に価値と定着を積み、価格が価値に追いついていない状態を作ってから改定する。第1四半期の17%増収は、その順序が顧客の納得を生んだことの証左と考えられます。値上げの成否は改定を告知した日ではなく、その前の10年間にどれだけ価値を積んだかで決まっている──この決算はそれを静かに物語っています。

今日の問い

あなたの会社の商品は、顧客の業務のどれほど深くに根を張っているでしょうか。顧客が「これがないと仕事の進め方から変えなければならない」と感じる状態を作れているなら、価格はその価値にまだ追いついていないかもしれません。据え置いてきた価格の中に、眠っている価値はないでしょうか。

本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。

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