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デルタ航空、なぜ「プレミアム」が主役になれたのか

プレミアム戦略値決め航空業界

米デルタ航空でプレミアム席の収入がエコノミーを初めて逆転。100年目の主役交代の裏には、「移動」ではなく「機内で過ごす時間の質」に値段をつけ直した15年がかりの価値設計がありました。

現状

座席の広さや設備というスペックで価格差を説明している

理想

移動時間の質という顧客の価値で上位価格が選ばれている

何が起きたか

米デルタ航空の2025年10〜12月期で、プレミアム席の収入(56.95億ドル)がメインキャビン=エコノミーの収入(56.20億ドル)を創業約100年で初めて上回りました。続く2026年1〜3月期もプレミアム収入は54億ドルで前年比14%増。エコノミーの伸びが1%にとどまる中、同社は1座席あたりで競合より約20%多い収入を得ていると報じられています。

顧客は誰で、何に困っているか

主役は富裕層だけではありません。長距離路線で「エコノミーの窮屈さは避けたい。しかしビジネスクラスの運賃までは払えない」という中間の顧客層が厚く存在します。出張者も同様で、法人顧客の85%が2026年4〜6月期の出張支出を「増やすか維持する」と回答しており、移動そのものより「移動時間を消耗にしないこと」への支払い意欲が高まっています。困りごとは「安く飛びたい」ではなく「長時間のフライトで疲れたくない、時間を無駄にしたくない」に移っていたのです。

付加価値の構造──「席の広さ」を「時間の質」に変換した

デルタの打ち手は、エコノミーとビジネスの間に「プレミアムセレクト」という中間クラスを設け、国際線の新造機ではプレミアム席比率を従来の約30%から50%近くまで引き上げたことです。機能としては「広い座席・優先搭乗・手厚いサービス」ですが、便益は「機内で眠れる、働ける、疲れない」。そして顧客にとっての価値は「到着後すぐ動ける身体と時間」です。CEOのエド・バスティアン氏は15年かけてこの転換を進め、プレミアム顧客は景気変動や地政学リスクの影響を受けにくいとも述べています。価格でしか選ばれないエコノミーが景気に振られるのに対し、価値で選ばれる席は需要が安定する──この構造の差が業績の差になっています。実際、今後計画されている供給拡大のほぼすべてがプレミアム席に振り向けられると報じられており、エコノミー席市場が採算割れ寸前までコモディティ化する一方で、プレミアム市場は価格決定力を保っているとされます。

値決めへの接続

注目すべきは、デルタが「全体を値上げした」のではなく、「高く払う理由のある顧客に、高く払える選択肢を用意した」ことです。価値の対価は一律の運賃値上げではなく、キャビン構成の組み替え、つまり高単価席の供給比率を増やすことで回収されています。同じ機体・同じ路線でも、誰のどの困りごとに応えるかで1座席の単価は変わる。コモディティ化した下位市場で消耗せず、価値が伝わる層に供給と価格の主導権を寄せていく値決めの設計だと考えられます。

今日の問い

あなたの会社の商品ラインには、「高くても買いたい顧客」が選べる選択肢がありますか。全顧客一律の価格設定のままで、支払い意欲の高い顧客の価値を取りこぼしていないか。エコノミーとビジネスの「間」にあたる価格帯を、自社の事業で設計できないか──今日、検討してみてください。

本記事は、株式会社カクシンが提唱する付加価値経営の視点でニュースを解説するものです。